日本発売、肥満症治療薬「ウゴービ」の「効果と注意点」「そもそも手に入るのか」
筋肉量が減ってしまう問題も
肥満は万病のもとだ。ウゴービは、当初、予想もしなかった様々な疾患に有効なようだ。アルツハイマー型認知症に対する臨床研究まで進んでいる。 では、副作用はどうだろうか。これまでの臨床研究を総括すると、3~4割の患者に悪心や下痢などの消化器症状を起こすが、多くは自制内で、基本的には安全だ。 ただ、問題がないわけではない。それは急激な減量により、脂肪よりも筋肉が減ってしまうことだ。ウゴービの先行研究について開示されたデータを、米国ボストン在住の大西睦子医師が分析したところ、減少した体重の約4割が除脂肪体重(主に筋肉)だったという。 筋肉量が減って、相対的に脂肪のウェイトが増す肥満をサルコペニア肥満と呼ぶ。この状態は、通常の肥満より、生活習慣病に罹りやすく、運動能力、特に歩行能力が低下することが分かっている。若年者はともかく、高齢者なら転倒し、寝たきりのリスクが高まる。私個人の意見を言えば、サルコペニアになるくらいなら、筋力が維持された肥満の方がいいと考えている。 では、どうすればいいのか。サルコペニア肥満の予防には、トレーニングが有効だ。特に、スクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操などの筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返す運動が重要だ。ウゴービの使用をお考えの方は、是非、筋肉トレーニングを併用することをお勧めしたい。 ウゴービの使用には美容面でも問題がある。それは、筋肉であろうが、脂肪であろうが、急速な減量は皮膚の皺やたるみを増やしてしまうからだ。前出の大西医師は、「米国では『セマグルチド顔』として社会問題となっている」という。そのために、皮膚充填剤の注入や、皮膚引き締め術を必要とする患者までいるという。これでは何のための減量かわからない。 ウゴービには、このような負の側面がある。ただ、それでも減量できることの魅力は大きい。世界中でウゴービが不足している。世界各地でウゴービの偽薬が問題となっているし、同成分の糖尿病治療薬「オゼンピック」の適応外使用が急増している。2022年3月、米国食品医薬品局は、オゼンピックとウゴービを「不足医薬品リスト」に登録した。