企業が考える適正な円相場、「1ドル=110円台~120円台」が半数 ~ 希望と実態のギャップ大きく~
― 円安に関する企業の影響アンケート(2024年5月)―
日米金利差などを背景に外国為替レートは2021年以降円安傾向で推移している。とりわけ4月に入ると円安が急加速し、4月29日には34年ぶりに一時1ドル=160円台をつける場面もあった。その後一転して円高方向に変動するなど、乱高下を繰り返すも、150円台にとどまっている。 企業からは円安による原材料・燃料価格などの輸入物価の上昇を危惧する声が聞かれる一方で、上場する製造業を中心に過去最高の純利益を更新したほか、インバウンド消費が活発になるなど、企業活動にさまざまな影響が及んでいる。 そこで帝国データバンクは、円安が企業へ及ぼす影響についてアンケートを行った。
円安の進行、企業の63.9%が「利益にマイナス」。3割超が「売上高・利益ともにマイナス」
昨今の円安が自社の業績(売上高と経常利益)に及ぼす影響について、【売上高】に「プラス影響」が16.0%、「マイナス影響」が35.0%、「影響なし」が49.0%だった。 一方で、【利益】については「プラス影響」が7.7%、「マイナス影響」が63.9%、「影響なし」が28.5%と、およそ3社に2社がこのところの円安によって、利益面でマイナスの影響を受けている/受けることが分かった。 【売上高】と【利益】それぞれの影響の組み合わせでみると、【売上高】マイナス影響×【利益】マイナス影響が31.7%で最も高く、3割超の企業が「売上高・利益ともにマイナスの影響」を受けている/受ける。次いで【売上高】影響なし×【利益】マイナス影響(23.7%)、為替は業績には影響しない【売上高】影響なし×【利益】影響なし(23.5%)が続いた。 企業からは、「輸入材料が多く、メーカーが価格を上げてきたら、それを受け入れるしかない」(医療・福祉・保健衛生)というように、円安による原材料価格などの上昇が避けられない一方で、自社の商品・サービスへ上昇分を価格転嫁することは厳しい実情が多く聞かれた。 また、「円安の影響で輸入時計や宝石が軒並み値上げ。価格が高騰しすぎて消費意欲が低迷し、売り上げも減少」(専門商品小売)や、「国内メーカーなど仕入先の価格調整(上昇)を受けて販売価格へ転嫁したところ、得意先の購買意欲が減退」(建材・家具、窯業・土石製品卸売)と、円安による物価高が個人消費、企業の仕入れや設備投資に悪影響を与えている。 一方で、「海外販売は円建てでずっと回収しているので、円安の影響はない。また海外の取引先にはメリットがある」(機械・器具卸売)と円安を前向きに捉える企業も一部みられた。