中学受験を「しない」勇気が必要なときもある~親がでっち上げた「不安な現実」を子どもに強制していませんか~
■子どもにとって最悪なこと 子どもが中学受験に向いていないことは、子ども自身の価値に影響しません。これは決してきれいごとではありません。中学受験が当たり前という環境にいると、そこらへんがバグってしまう。中学受験のヒエラルキー上位者が輝かしい人間に見えてしまうけれども、そんなわけがないのです。 そんなわけがないのに、成績上位者は人間的にエラいという価値観を親が持つだけでなく、子どもに与えてしまう。成績がよいあの子に対してあなたは何なのという視線を向けることで、半ば無意識にそういうことをやってしまう。これが最悪なのです。
親は自分の子どもの価値を誰よりもよく知っているはずです。何度も言いますが、これはきれいごとではありません。子どもの価値は中学受験をはるかに飛び越えた先にあります。受験がうまくいかないだけで、親は子どもの人生が行き詰まったような気持ちになることもありますが、これも一時的な気の迷いにすぎません。人間が幸せになる要素なんて、複雑すぎてまったく把捉できないのに、そんなに急ぎ足で何を達成しようとしているのでしょうか。
とはいえ、親としてはそれほど乗る気でなかったのに、周りの友達に影響されて子どもが中学受験をしたいと言い出すこともあるでしょう(このパターンは本当に多いです)。そんなときには、多くの親は子どもの希望を叶えるためにいっしょに頑張ってみようとするでしょう。その気持ちは尊いものです。 子どもとしばらくやってみて、この子は中学受験で輝くタイプではないと気づいたとしましょう。そんなときに親ができることは、子どもの受験をできるだけよい経験にしてあげるような方向づけを行うことです。具体的には、複数校の受験をして、全ての学校に受からないということがないようにすることで、結局公立に行くことになったとしても、子どもがやってよかったと思えるようなプロセスと段取りを組んであげることです。中学受験において、そのための情報収集は親の務めです。