橋本環奈が朝ドラ主演を勝ち取る“はじめの一歩”になった『警視庁いきもの係』 刑事ドラマ史に残る脱力感
『おむすび』で放つ存在感
18日朝、朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の舞台が福岡県糸島市から兵庫県神戸市に変わり、新章がスタートした。 【写真】警察の制服姿でネコを抱く橋本環奈 同作はここまで物語の展開やギャルの描写などに賛否の声があがり、X(Twitter)には「#反省会」の批判的な声も少なくない中、「主演・橋本環奈の知名度と人気で持ちこたえてきた」という声もある。もし『おむすび』が橋本より知名度と人気の低い若手女優が演じていたら……と考えると彼女の存在感が分かるのではないか。 そんな橋本の女優人生を振り返ると、「きっかけになった」と言われているのは以下の2作。1つは2017年7月に公開された福田雄一監督の映画『銀魂』。小栗旬、菅田将暉、長澤まさみ、岡田将生、柳楽優弥、吉沢亮ら主演級がそろう中、ヒロインの神楽を演じて称賛を集め、「女優・橋本環奈」を印象付けた。 そしてもう1作、業界内で注目を集めたのが同年放送の『警視庁いきもの係』(フジテレビ ※FODで配信中)。あまり知られていないが、橋本にとっては連ドラ初ヒロインであり、記念碑的な作品と言ってもいいかもしれない。
■あえてコスプレ風の制服姿を選択 物語は元捜査一課の敏腕刑事として「鬼の須藤」と恐れられていた須藤友三(渡部篤郎)が、通称「いきもの係」と呼ばれる警視庁総務部総務課・動植物管理係に異動するところからスタート。そこは新人巡査・薄圭子(橋本環奈)の1人のみが所属し、容疑者のペットを保護する窓際部署だった。圭子は事件に興味がなくマイペースな性格だが、動物への幅広い知識と鋭い洞察力を駆使し、須藤とのコンビで事件を解決に導いていく……。 こう書くと、「実質的な主人公は橋本が演じる圭子である」ことがわ分かるのではないか。 須藤はよくいる昭和風の刑事である一方、獣医学部卒で極端な動物マニアの圭子はキャラクターが立っている。捜査一課の刑事たちに「総務課の仕事は誰にでもできる仕事ではありません。『犯人を捕まえるだけ』の捜査一課と一緒にしないでください」と言い放つなど、“生き物ファースト”で誰にも物怖じしないキャラクターは主人公そのものだった。 事件解決のきっかけはすべて圭子の動物に関する知識や愛情であり、犯人を追い詰めるシーンも橋本が前面に出ること、事件現場で「警察官のコスプレをしている一般人」と勘違いされるほど浮いていることも含め、「橋本環奈と動物を見るためのドラマ」と言っていいだろう。 そんな橋本とコンビを組む渡部はベテランらしい包容力を発揮。一歩引いたポジションから橋本の演技を受け止めるなどサポートしつつ、動物愛が強すぎる圭子と昭和風刑事・須藤のギャップを作って笑いを誘った。 さらに橋本を盛り立てたのが、「いきもの係」事務員の田丸弘子(浅野温子)、元刑事の二出川昭吉(でんでん)、動植物管理係を立ち上げた捜査一課管理官・鬼頭勉(寺島進)らベテラン勢。かつて須藤とコンビを組んでいた捜査一課の石松和夫(三浦翔平)、ヘビ好きのギャル風受付・三笠弥生(石川恋)の美男美女に、ドラマ初出演の「うたのお兄さん」こと横山だいすけも含め、助演俳優たちが橋本を包み込むようにコメディらしい明るいムードを作っていた。 放送当時これらのキャストが口をそろえるように「楽しい現場だった」とコメントしていたが、コンビネーションの良さは映像からしっかり伝わってくる。