橋本環奈が朝ドラ主演を勝ち取る“はじめの一歩”になった『警視庁いきもの係』 刑事ドラマ史に残る脱力感
コメディエンヌとしての第一歩
同作は「情報番組やバラエティで“鉄板”と言われる動物をドラマでも有効活用する」。さらに「ドラマの定番ジャンルである刑事モノをベースにしよう」というハイブリッドなコンセプトの作品。つまり「動物好き」「刑事モノ好き」の両方を引き寄せられるドラマとして制作された。 ただ、物語の割合としては「動物8」に対して、「刑事2」程度の体感だった。 まず「いきもの係」にはスコティッシュフォールドのナオミ(ティティ)を筆頭に、犬、ポニー、マイクロブタ、カメ、オウムなどが飼育されて頻繁に登場。事件につながる各話にも、ジュウシマツ、ケープペンギン、ヘビ、シバヤギ、リスザル、ヨウム、ピラニア、モリフクロウ、ヨツユビハリネズミ、ハチなどがフィーチャーされ、圭子がこれらにかかわる生態、飼育方法、治療、アニマルセラピーなどの圧倒的な知識を披露した。 その他でも動物の“サービスショット”は目白押し。例えば第1話では、さまざまな狭い場所に猫が挟まれた写真をフラッシュで見せていくシーンで動物好きの視聴者を喜ばせた。 関東近郊のペットショップと動物病院のデータをまとめた「なんでもペットノート」や、東武動物公園で撮られたエンディングの“動物着ぐるみダンス”なども含め、刑事ドラマ史上最高クラスの脱力感と言っていいだろう。刑事ドラマにつきものの重苦しさをこれほど感じない作品はなかなかお目にかかれない。 放送当時は明朝の仕事や学校が気になる日曜夜にふさわしい「橋本環奈+動物の“かわいいコンビ”による癒やし」が肝の作品だった。時代は令和に変わり7年が過ぎた現在のほうがそんな癒やし重視の世界観はフィットするのではないか。 橋本は『警視庁いきもの係』の翌2018年、『今日から俺は!!』(日本テレビ)で演じたスケバン女子高生役でコメディエンヌとしての評価を確立させた。以降はドラマ・映画・舞台に引く手あまたの状態になり、ついには朝ドラ主演女優の座を射止めた。橋本が『警視庁いきもの係』で見せたコメディエンヌぶりを感じるシーンが増えるほど『おむすび』の評判も上がっていくのかもしれない。