森田剛の思う“言葉の信用性”「本心は目と言葉に出る」
失敗した姿も、見せていく
言葉の重みを否応なく痛感する本作において、和田信賢を演じた森田は「言葉の信用性を担保するもの」をどう解釈しているのだろうか。 「少し今回の作品とは離れちゃうかもしれませんが、人の本心は目に出ると思っています。だからこそ、実際には姿が見えないにも関わらず、ラジオから聞こえてくる和田さんの声に魅了された人がたくさんいたなんて、驚異的ですよね。声だけで人を引きつけるって、凄まじいことですよ。和田さん自身が、嘘をつきたくないと心から思って、言葉を大事にし続けた人だったからこそ、聞くひとにちゃんと伝わったんだと思います」 森田が「信じよう」と思えるのは、スタッフ然りキャスト然り、ともにものづくりをする人たちの言葉。「僕も、自分をわかってもらえるように気をつけています」と、日ごろ携わる現場で意識していることを教えてくれる。 「一言でいうと、何事も一生懸命やること。それは恥ずかしいことかもしれないし、失敗もするかもしれない。とくに失敗したときに一生懸命になるって、より難しいことだと思うんですよね。なんとなくやっていればバレないことも、一生懸命やっているからこそ、バレてしまうものだから。でも、そういう姿も恥ずかしがらずに見せていくことが、信頼につながるんだと思います」 ドラマや映画など、映像制作の現場は短期決戦だ。限られた時間で、お互いにどんな人間かもわからない状態で、ものづくりをする。そんな、ある意味“限界”な状態で大切なのは、お互いの信頼関係のために適度な自己開示をすること。「役を演じる前に、一人の人間ですからね」と話す森田の言葉には、これまでの経験に裏打ちされた説得力が滲む。 「この作品をきっかけに、当時おこなわれていたことを知る方も、大勢いらっしゃると思います。当時のアナウンサーの方々それぞれに信念があって、それらはすべて間違っていない。和田さんだって、自分の言葉で人を楽しませたいっていう気持ちが根底にあったはずなのに、気づいたら取り返しのつかないことになっていた。全員が熱い思いを持っていて、信念をぶつけ合っているにも関わらず、どうにもならないことがある。世代を問わず多くの方に観ていただきたいですが、とくに若い世代の方に観てもらって、何か感じ取ってもらえたらいいな、と思う作品です」 ■『劇場版 アナウンサーたちの戦争』は8月16日(金)より全国公開。 ©2023NHK 配給:NAKACHIKA PICTURES 撮影/奥田耕平、取材・文/北村有、ヘアメイク/TAKAI、スタイリング/松川総 衣装協力/デニムセットアップ ジャケット ¥20,900 リーバイス フォー エディフィスパンツ ¥19,800 リーバイス フォー エディフィスその他 スタイリスト私物 ●問い合わせ:エディフィス 新宿 03-5366-5481