母は70歳でまだ働いています。「働くほうが健康にいい」と言っていますが、本当ですか? 近所のスーパーで清掃をしています
最近の物価上昇も相まって、年金だけでは生活が厳しいという話をよく耳にします。 とはいえ70歳を超えても、ずっと働き続けなければいけないというのも考えものです。「働くほうが健康にいい」と本人が言っても、親がこの年齢になっても働き続けていると少し心配になる人もいるでしょう。 この記事では、年金受給額と生活費の現実を考えつつ、働くことが高齢者の健康にどのような影響を与えるのかについて考えてみます。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える?
年金だけで生活するのは厳しい? 受給額と支出の現実
まずは70歳女性が単身で生活する場合の年金受給額と支出を見ていきます。 厚生労働省の2022年の厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、70歳の厚生年金の平均受給月額は(国民年金分も含む)14万1350円です。総務省統計局の2023年の家計調査報告(家計支出編)によると65歳以上の単身無職世帯の平均支出は15万7673円と、毎月1万5000円程度足りないことが分かります。 これはあくまでも平均額同士の比較にすぎず、年金額は現役時代の年収や働き方(会社員なのか自営業なのか)などによって異なってきますが、年金収入だけで生活が成り立たない可能性はあるわけです。
清掃スタッフの時給から収入を計算してみると……
ある求人サイトによると全国の清掃スタッフ(アルバイト・パート)の平均時給は1020円とのことです。ただし、2024年10月に最低賃金が引き上げられ、全国平均は時給1055円となっています。時給1055円で働いた場合を考えていきましょう。 例えば1日3時間のマンション清掃で週に3日間(月間12日間)働いた場合、月の労働収入は3万7980円です。先ほど示した平均年金受給額と合わせると17万9330円の収入となるため、平均支出である15万7673円で生活しても2万円以上の貯金ができることになります。 週3日間働くことで得られる収入の効果は決して小さくないのです。
働くことが健康に良いって本当? 高齢者の健康への影響
本人が言うように「働くほうが健康にいい」というのは、あながち間違いではありません。厚生労働省の中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)特別報告において、就労が健康維持に役立っているということが示されています。 働くこと自体が、適度な運動となり、筋力や心肺機能の維持に役立つ側面は大きいでしょう。特に清掃という身体を動かす仕事であればなおさらです。 さらに、精神的な面に与える影響も無視できません。働くことが孤立を防ぎ、心の健康を保つ役割を果たしてくれます。高齢になると、社会から孤立してしまうことがあるため、働くことで自分の役割を感じることができるのは大切なことです。 もちろん、全ての高齢者にとって「働くことが健康にいい」とは限りません。体力に不安があったり、長時間労働が負担になったりする場合は、逆に健康に悪影響を与える可能性もあります。母親が「働きたい」と言っている場合でも、無理のない範囲で働けているかを見守る必要がありそうです。