「ル・ビスキュイ・アラン・デュカス」が日本初上陸──アラン・デュカスが語る、ビスキュイ革命
フランス料理界の巨匠アラン・デュカスが、パリで人気を博す「ル・ビスキュイ・アラン・デュカス」を10月24日、東京・日本橋に出店する。世界初の海外出店となる今回の日本進出について、アラン・デュカス本人に訊いた。 【写真を見る】デュカスが手掛けるビスキュイが日本上陸!
革新的なビスキュイ作り
「ル・ビスキュイ・アラン・デュカス」は、世界でもっとも多くのミシュランスターを持つシェフ、アラン・デュカスが2022年9月にパリでオープンしたビスケット専門店だ。日本ではすでに、姉妹ブランドのショコラ専門店「ル・ショコラ・アラン・デュカス」が人気を博しており、今回のビスキュイ専門店の出店は、デュカスの日本市場へのさらなる進出を示すものとなる。 なぜ日本だったのか。「日本の方たちが、私たちの製品を高く評価してくれるからです。日本人は品質に対する目が肥えています」 日本人の繊細な味覚に対する敬意を示しながら、デュカスは続ける。「日本人も素晴らしいビスキュイを作ることはよく知っています。日本人の舌が肥えていることも、もちろん承知しています。だからこそ、これまでとは違う、新しい提案ができると考えたのです」 その新しい提案のひとつである「エグザ」は、ブランドを象徴する六角形のビスキュイだ。小麦粉、とうもろこし粉、そば粉、米粉など、様々な穀物の風味を活かした味わいが特徴で、サンポール、クロックファン、ビスキュイ・サラザンなど、計7種のフレーバーを展開する。 試作が成功するまでは、30種以上のレシピを試したという。 「これまでとはまったく違うビスキュイを作るために、どんな穀物を使い、どんなバターを選び、それらをどのように配合し組み合わせるか、緻密に考え抜きました」 その努力は、「エグザ」の独特な食感に結実している。ザクッ、サクッ、ホロッと、特徴的な生地のテクスチャーに、ナッツや穀物など粒度の異なる食材が織りなす絶妙な口当たりは、まさに「今までになかった新しいビスキュイ」そのものだ。 日本市場への敬意を表して、日本限定商品も用意されている。「バー・セレアル」は、かぼちゃの種やヘンプシード、亜麻仁の実など8種類の穀物と種子を使用。歯ざわりのいいリズミカルな食感にくわえて、甘さは極力控えたのだという。素材本来の味がストレートに伝わるビスキュイに仕上がった。 「パリでは、配合を5%ずつ変えていくことで、最終的に他のビスキュイとは50%違う、まったく新しいものを作ることができました。1年間の研究を重ね、今までになかった新しいビスキュイを生み出せたと自負しています」とデュカスは胸を張る。 ■アイデア誕生の瞬間 「ル・ビスキュイ・アラン・デュカス」の誕生秘話も明かされた。デュカスによると、そのアイデアは突然のひらめきから始まったという。 「朝起きた時にアイデアが浮かぶんです。『あ、コーヒーを作ろう』とか、『ショコラを作ろう』とか。そして、ある朝起きた時に『今度はビスキュイを作ろう』と思ったんです。それがきっかけでした」 このひらめきは、デュカスの幼少期の思い出とも結びつく。デュカスの記憶に残る"おばあちゃんが作ってくれたバターの風味たっぷりのビスキュイ"を「ピュール・ブール」で再現した。軽やかな口当たりにバターの味わいが広がり溶ける、儚くも贅沢なこのビスキュイは、デュカスの原点ともいえるものだ。 しかし、アイデアを実現させるまでには長い道のりがあった。「そのアイデアが浮かんだあと、エネルギーと時間を注ぎ込んで、それを自分の理想のレベルに持っていくんです」 デュカスによれば、アイデアが生まれてから商品化までに1年以上の時間をかけたのだという。この丁寧なプロセスが、彼の製品の質の高さを保証している。 アラン・デュカスによる新たな挑戦「ル・ビスキュイ・アラン・デュカス」。卓越した技術と情熱が詰まった革新的なビスキュイが、間もなく日本の食文化シーンに新風を吹き込む。フランス発の究極のビスキュイ体験に、今から期待が高まる。 ■ル・ビスキュイ・アラン・デュカス 東京 住:東京都中央区日本橋本町1-1-1 TEL:03-3516-3511
文・松村亜希 編集・岩田桂視(GQ)