福島第一原発の除染土処理、「全閣僚会議」新設へ…45年までの最終処分向け対応加速
政府は、東京電力福島第一原子力発電所事故を巡って発生した「除染土」の処理に向け、具体策を検討する全閣僚会議を設置し、月内に初回会合を開く方針を固めた。2045年までに福島県外で全量を最終処分する必要があるが、受け入れ先の確保などで課題が指摘されており、省庁横断で取り組むことで対応を加速させる狙いがある。 【写真】除染土を道路の盛り土に利用、整備された道路
複数の政府関係者が明らかにした。
会議のトップは林官房長官が務め、復興相、環境相、国土交通相、総務相、農相ら全閣僚が参加する方向だ。除染土の処理に関わる省庁の枠を環境省などの一部から広げ、政府として多角的に問題に対処する姿勢を明確にする。
除染土は、原発事故後に住宅地や農地などで実施した除染作業の際にはぎ取られた土。同原発が立地する同県大熊、双葉両町に設けられた中間貯蔵施設に累計約1300万立方メートルが搬入されており、東京ドーム約11杯分の量になる。中間貯蔵のあり方などを定めた法律で、国は45年までに県外で最終処分を完了させるよう義務づけられている。
除染土の4分の3は、放射性セシウム濃度が1キロ・グラムあたり8000ベクレル以下で、安全に再利用できる基準を満たしている。政府は8000ベクレル以下の土は、飛散防止の対策を行った上で、道路工事のアスファルトの土台に使用するなど、公共事業の資材を中心に活用することを検討している。残りは埋め立てなどで最終処分する考えだ。
政府はこれまで、除染土に通常の土をかぶせた畑でキュウリやダイコンを収穫したり、道路の盛り土に活用したりと、福島県内で安全性を確認する実証事業を行ってきた。
一方で、環境省は22年度、東京都新宿区の新宿御苑などで花壇や芝生での再利用の実証事業を計画したが、地元の反対で頓挫した。
政府は今後、公共事業を発注する国交省、農地利用を所管する農林水産省など、各省庁間で役割を分担し、処理を具体化させていく方針だ。