【ホンダと経営統合へ】業績不振で苦しむ日産自動車、グローバル競争力強化で立て直しを目指す この計画でBYD、小米集団ら中国勢に立ち向かえるのか
日産自動車とホンダは12月23日、経営統合に向けた協議を正式に始めることで合意した。持ち株会社が設立され、両社はその子会社の形となるため、日産ブランドはそのまま残る見通しだ。 【写真】大手スマホメーカーがつくった新エネルギー自動車
日産自動車の7-9月期業績は5%減収、85%営業減益、当期純利益は前年同期の1907億円の黒字から93億円の赤字転落となった。上半期の販売台数では、全体の21%を占める中国が20万台の減少、全体の14%を占める日本、39%を占める北米がそれぞれ6万台の減少となるなど、全体でも27万台の減少となった。 中国における急激な新エネルギーシフト、中国メーカーの輸出攻勢による競争激化、米国におけるHEV/PHEV需要の増大といった市場環境の変化に対して、同社はタイムリーに顧客のニーズを満たす商品を提供できず、コスト競争力、ブランド力の点でも他社に対抗できなかった。販売目標と実績が乖離し、収益上の課題が重荷となったなどと同社は分析している。 こうした現状分析をもとに、今後中国への新エネルギー車、米国へのPHEVとe-POWER投入の加速、車種当たりの販売台数の増加、ブランド力の強化などにより商品ポートフォリオを最適化し、開発期間を30か月に短縮するなどにより競争力を高め、技術やソフトウェアの分野でスマートパートナーシップを構築するなどパートナーシップを最大限活用するとしている(2024年上期決算発表資料より)。これまでに経験したことのないほど激しい変化が起きているグローバル自動車市場において、果たしてこうした戦略で勝ち抜くことができるだろうか。
新エネルギー自動車の覇権を握ろうとしているBYD
EV業界最大手のテスラは現在、完全自動運転(FSD)システムの開発、普及に注力している。ハードとしての自動車販売で稼ぐのではなく、頻繁に更新するFSDシステムを顧客に提供するといったソフトウェアのサブスクリプションで稼ぐ収益モデルを確立しようとしている。十分なシェアさえ確保できれば高い収益率を継続的に維持できるからだ。そうした大きな目標があるからこそ、中国市場で価格競争に巻き込まれても、それを克服して低価格車を投入しようとする強いモチベーションがある。 テスラと同様、自動運転技術がこの産業で生き抜くカギだとみているのが、吉利控股集団、蔚来集団、長安汽車、小鵬汽車、理想汽車といった中国メーカーだ。 なかでも注目されるのは、創業直後の1997年にはリチウム電池業界に参入、2003年に小規模な自動車会社を買収するところから自動車産業に参入してきたBYDだ。新エネルギー自動車の生産台数では既にテスラを凌駕する水準にまで規模を拡大させている。 2008年にはウォーレン・バフェット氏から投資を呼び込むなど、株式市場では早くから注目を集めてきた企業であり、2008年にはPHEV、2010年にはEVの生産を開始するなど、開発の歴史は古い。とはいえ長年、中低価格のガソリン車やスマホ用リチウム電池が収益を支えてきた歴史があり、エンジン車生産を完全に廃止できたのは2022年3月になってからである。 地道にリチウム電池製造技術、低コスト車生産技術を磨いてきた成果がここ数年で大きく花開いたといえよう。2021年の自動車販売台数は73万台、2022年は187万台、2023年は302台。2024年1-11月の累計では前年同期比4割増の376台と急速に販売台数を伸ばしている。この高い競争力を以て同社はグローバルでテスラと競い合い、新エネルギー自動車の覇権を取ろうとしている。
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