廣岡達朗コラム「西川龍馬のプッシュバント もう少し早く構えるべきだった」
人を育てることの意味
現在の首脳陣は人を育てることの意味が分かっているのだろうか。あんなに動かしたら人は育たない。阪神が一軍のクリーンアップを二軍にやるのはナンセンスである。 【選手データ】西川龍馬 プロフィール・通算成績・試合速報 クリーンアップを打つということは、責任感を伴う。それがないなら野球をやめてほしい。選手に罪はない。監督、コーチにどうすれば人が育つかの勉強が足りないのだ。 巨人は「今年は優勝できない。Aクラスを確保して遅くとも再来年には優勝する。そのために若い投手に経験を積ませるから、少し我慢してほしい」と言える監督ならまだいい。 しかし阿部慎之助監督の目の色を見ると、真剣味が足りない。他球団であんな表情をしていたらナメられる。陣頭指揮を執って何かあれば即刻注意、いいプレーをしたら褒めてやろうという姿勢が見えない。評論家も結果論ではなく、勝つためにこうしろと言うべきである。 西武は松井稼頭央監督の休養に伴い、渡辺久信GMが監督代行を兼任。GMが見込んで呼んだ監督が成績不振の責任を取るなら、GMも一緒にやめるべきである。それなのに引導を渡す球団フロントがいない。 フロントは本社からの出向組が多い。成果が出なくても帰る場所がある。だから真剣味がない。極論を言えば、球団を持つ資格が親会社の西武にはなくなった。命懸けで野球に取り組むフロントを置くべきだ。
集団スポーツは優勝しなければ意味がない
2021年、ヤクルトが優勝したとき、私は当時の球団社長に忠告した。「勝因は監督というより、先発投手の粒がそろっていたからです。でも、現在の先発陣は自然の原理で年を取ります。先発を抑えにして投球イニングを短くすべきです。『お前が培ってきた経験、キャリアをリリーフで全開にしてくれ』と言って、次代の若い投手を育てていかないと穴が開きますよ」。案の定、リーグ連覇したあとは低迷が続いている。若い投手を作っていなかったからだ。 休養十分の先発投手が5回まで投げて勝利投手の権利を取ったら代えるのはナンセンス。なんのためにトレーニングをしているのか。 その象徴が石川雅規である。現役最多の通算186勝(6月10日現在)、23年連続勝利を挙げた。彼は人柄もいい。しかし、集団スポーツというのは優勝しなければ意味がないというのが私の持論である。2013年にバレンティンがシーズン本塁打記録を塗り替える60本を放ったが、チームは最下位に沈んだ。あのときと同じである。 石川は惜しまれつつ去るか、最後にチームが彼の力を借りるか、首脳陣は決断すべき時に来ている。