廣岡達朗コラム「西川龍馬のプッシュバント もう少し早く構えるべきだった」
今はスコアラーに委ね過ぎ
6月8日の巨人-オリックス戦(東京ドーム)についても触れたい。オリックスの1点リードで迎えた4回表、無死一塁から四番・西川龍馬が投手の足元を抜くプッシュバントを決めた。ああいう戦術を使えればたまらなく痛快なのだが、首脳陣はそこまで考えていない。 私に言わせれば、西川はもっと早くバントの構えをすべきだった。そうすると一、三塁が前に来て、二塁手はカバーのため一塁ベースへもっと接近していた。そこでプッシュバントを仕掛けて投手をかわせばガラ空きのエリアに打球は転がっていた。セーフティーで突然構えに入ったのも悪くはないが、一塁に向かいかけた二塁手が打球を処理。結果、内野安打になって2点を追加した。 私は西武監督時代、プッシュバントを使って82年の日本ハムとのプレーオフで江夏豊を攻略した。優秀な選手が出れば出るほど対策を練るため野球のレベルは上がる。 翌9日と合わせて巨人は2日連続で若手投手にプロ初勝利を献上した。巨人はヤマ勘打法。データがなく、ヤマを張れなければやられる。今はスコアラーに委ね過ぎだと私は思う。 ●廣岡達朗(ひろおか・たつろう) 1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。 『週刊ベースボール』2024年6月24日号(6月12日発売)より 写真=BBM
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