これから10年で必ず起こる…ますますヤバくなる、50代「ホワイトカラー」定年後に待ち受ける過酷な現実
AI時代に求められる「学際的スキル」
経済コラムニストとして活躍されていた大江英樹さん(2024年1月ご逝去)の2018年の著書『定年3.050代から考えたい「その後の50年」のスマートな生き方・稼ぎ方』(日経BP)は、ご自身の定年の経験から人生100年時代を安心して楽しく暮らすためのヒントが満載です。 その中で、定年3.0に至る過程が、 ●定年1.0:生活の不安なくのんびりと暮らせた時代 ●定年2.0:「老後のお金」に関する常識が大きく変化した時代のシニア像 ●定年3.0:「お金」「健康」「孤独」の3つの問題をそれぞれが解決していかなければならなくなった と分類されています。 そして、この定年3.0の考え方をベースにしつつも、まだ定年前の私たち現役世代が今後向き合わなくてはいけないのが、定年後も積極的に働くことを前提にしていかざるを得ない、という現実です。私は、その姿を「定年4.0」として、次のように定義しました。 ●定年4.0:リスキリングで現在の雇用に頼らない人生とキャリアを自ら創造する 「定年4.0」の時代の前提には、AIの進化があります。これから訪れるのは、AIと一緒に働く時代です。その事実をふまえ、リスキリングに取り組む際に、ぜひ取り入れていただきたいのが「学際的スキル」という考え方です。 (1) AI時代に人間の雇用を維持するには 「学際的」とは、英語の「interdisciplinary」という言葉が元になっていて、「複数の異なる専門分野にまたがる、分野の垣根を越えた」という意味です。ビジネスの世界における「学際的スキル(interdisciplinary skills)」を一言でまとめると、次のようになります。 ●学際的スキルとは、「複雑な問題を解決し、新たな洞察を生み出し、イノベーションを起こすために、2つ以上の異なる分野の知識を統合し、応用する技術のこと」 当然のことながら、この学際的スキルは、短期的に培われるものではありません。自身がこれまで所属してきた組織の業種、職種などを通じて得てきた知識、経験、スキルなどをベースに、リスキリングを通じて新しいスキルを足していく、場合によっては掛け合わせていくことが必要になってくるということです。 AIは一つの分野を深化させていくことは得意ですが、複数の分野の知識を結びつけて現時点で存在していない考え方や知識を作り出すのは不得意です。人間ならできる独自に考えついたり、応用したりといったことができるレベルには、現時点で到達していません。 だからこそ、AIが提供する価値とは異なる価値を人間が提供していこうと考えたときに、この「学際的スキル」が重要となってきます。AIによって、事務作業を中心とした役割はどんどん自動化されていきます。 私たちは、事務作業として自動化できない領域、すなわち、未だ解決に至っていない社会課題そのものを明確化する、新たな解決策を模索し構築するといった仕事を担っていく必要があります。 私たち人間は、「問いを立てる力」を強化する必要があり、未解決の課題を解決していくために複数の視点や経験から培われるスキルを持つことがより一層重要になっていくということです。 …つづく、後藤宗明さんの連載<これから10年後に起こる…50代、団塊ジュニア「定年後」の新たな「熾烈競争」の現実…仕事に就くための生存競争にさらされる>では、人口ボリュームの多い団塊ジュニアが定年後に備えるべき能力をお伝えしています。
後藤 宗明(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事)