【前編】総距離37㎞、越えるピークは12座。ロング&ハードな1泊2日の大縦走。「大菩薩連嶺北南ファストトリップ」
【前編】総距離37㎞、越えるピークは12座。ロング&ハードな1泊2日の大縦走。「大菩薩連嶺北南ファストトリップ」
カモシカスポーツのファストパッキング隊長、茂垣亮馬さんのアドバイスで装備のスリム化に成功した編集部員・カトウ。新調した装備を携え、茂垣さんとともに向かうは南北に峰々が連なる山梨の大菩薩連嶺。 いままでよりもっと速く、遠くへ――という体力無視の無謀なチャレンジは、果たして成功するのか? 編集・文◉PEAKS編集部 写真◉宇佐美博之。 ▼装備の見直し編はこちらをチェック 。 「体力はたぶんあると思います。ファストパッキングってしたことないですし、山歩き以外は通勤の自転車くらしか運動もしてないんですけどね」。 未知数の状態でファストパッキングチャレンジへと名乗りを上げ、装備の軽量化以外に準備もなく山へと乗り込んだ編集部・カトウ。ひさびさの長い縦走を心待ちにしていた茂垣さんに比べ、不安の色が隠せず、茂垣さんのなにげない話しかけに対しても、どこか上の空。つい先日も飯能アルプスの長いルートを歩いてきたというものの、2日間で合計40㎞弱という今回の超ロングルートを歩ききることはできるのだろうか……。 ***。 4月中旬、ふたりが向かったのは山梨県の東部にそびえる大菩薩連嶺。日本百名山のひとつ、大菩薩嶺を有するこの山塊は、1500~2000m程度の山々が南北に連なっており、新緑の春、紅葉の秋にぴったりな場所だ。まだ木々が芽吹き始めたばかりで新緑にはちょっと早いものの、雪がない快適な山歩きが楽しめる場所として、今回はこのエリアをチョイス。ふたりは始発の中央線に乗り込み、塩山駅からタクシーで大菩薩ラインを北上。鶏冠山登山口へと向かった。 「加藤さんと僕、どちらの荷物が軽いですかね? 僕の装備のベースウエイトは6・3㎏とちょっと重めなんで、たぶんカトウさんのほうが軽いと思うんですが」。 そう言って、左手で自分の荷物、右手でカトウの荷物を持ち確認する茂垣さん。ショップで計測したときはカトウの装備のベースウエイトが5・9㎏程度になっていたこともあり、多少カトウのほうが軽いのではと想像したものの、感覚的には同じくらいのようだ。 「もしかして食材が重たいんですかね? 」 「いや~、基本フリーズドライなんで軽いはずなんですが……」 大菩薩連嶺の一番北に位置する鶏冠山を目指し、ふたりは歩き出した。10㎏近い荷物を背負っているものの、デイハイクの装備で歩いているようなスピード。その速度は、標準的なコースタイムの7割程度だろうか。登山口から鶏冠山までは3㎞程度の距離ながら、標高としては約500m登る。つまり、サクサクとは歩けない結構な斜度なのだ。 フットワークの軽い茂垣さんに対し、カトウは……茂垣さんから離れず、ビタッと後ろに張り付いている。しかも、極端に息が上がるでもなく、わりと余裕がありそうだ。これは軽量化の恩恵なのか、もしくは潜在的にすごい体力を備えているのか……。 鶏冠山の山頂は登山道から分岐しており、小さな社がそびえている。樹林帯の尾根を登りきってたどり着いた山頂からは、まだまだたっぷりと雪を戴いた富士山が。登山口に向かうまでにさんざん見てきた富士山だが、やっぱり登山中に見えると気持ちが高まるもの。