緑内障にレーザー治療、世界初の研究成果 福井県済生会病院、点眼治療より患者負担少なく
40歳以上の20人に1人が発症し、失明の原因として最も多い緑内障。福井県済生会病院(福井市)の新田耕治眼科部長が、日本人に多い「正常眼圧緑内障」のレーザー治療に関する世界初の研究成果を発表した。国内では目薬による治療が主流だが、新田部長は「レーザーは点眼の手間がなくなるなど患者の負担軽減になる。新たな選択肢として広がっていくだろう」と話している。 緑内障は、眼球内に水がたまってしまうことで眼圧が上昇し、目と脳をつなぐ視神経がダメージを受けて視野が徐々に欠けていく病気。ただ、眼圧が正常でも視神経が弱いと緑内障になるケースがあり、日本人は正常眼圧緑内障が7割以上を占める。発症すると完治できず、早い段階で進行を止めることが重要になる。 レーザー治療は、眼球から水が排出される出口部分に特殊なレーザーを照射することで詰まりをなくし、眼圧を下げる治療法。同病院によると、従来の点眼治療は、毎日の点眼が患者の負担となってやめてしまったり、皮膚のかぶれが起きたりと課題があった。約20年前に導入されたレーザーは、1回の施術で10年以上も眼圧を下げる効果が確認されるなど実績が評価され、米国の緑内障ガイドラインでは点眼と同等の位置付けとなっている。 新田部長はレーザー治療を取り入れた先駆者の一人。同病院での施術回数は、10年前は10件に満たなかったが、今年は200回を超えている。治療は10分程度で終わり、入院の必要はない。治療費は1回約3万円かかるが、3年分の目薬代とほぼ同じ。このように患者の負担が少ないこともレーザーの利点という。 点眼治療をせず、最初からレーザー治療をすることの有用性は2019年に英国で発表されていたが、日本人に多い眼圧が正常な緑内障患者を対象にしていなかった。そこで新田部長は20年から、国内26の医療施設と連携して、未治療の正常眼圧の緑内障患者99人にレーザー治療を実施。まずは1年間の効果と安全性を証明し、新田部長を研究責任者として今年4月に英国の学術誌で研究成果を発表した。 目薬の長期使用による副作用に悩む患者の助けになりたいと、レーザー治療の普及に力を注ぐ新田部長。全国でも増加傾向にあるが、「今回の論文発表をきっかけに、さらに多くの医療施設でレーザー治療ができるようになることを期待している」と話していた。