潜在化する暴力団 年々厳しくなる取り締まりの現状と課題
2012年10月、暴力団対策法(暴対法)が再改正され、新たに「特定危険指定暴力団」を指定して取り締まれるようになりました。暴力団の取り締まりは年々厳しくなっていますが、それでも暴力団の犯罪は後を絶えません。改正暴対法は治安の改善や犯罪抑止にどんな効果を発揮したのでしょうか。そして、今後の課題は何なのでしょうか。
唯一の「特定危険指定暴力団」工藤会
先月、九州を拠点とする工藤会の幹部が逮捕される事件が起きました。暴力団を取り締まる法律・暴対法は1992年に制定されています。暴対法では都道府県の公安委員会が指定した暴力団員が一定の行為をすることを禁止しています。 工藤会は全国に21ある指定暴力団のひとつです。さらに改正された暴対法で新たに設けられた「特定危険指定暴力団」に全国唯一指定されている団体でもあります。全国暴力追放運動推進センターの相原秀昭さんは、暴対法の意義をこう話します。 「暴対法は暴力団の暴力的行為などを規制するとともに、市民生活に危険が及ぶことを防止するために制定された法律です。工藤会が特定危険指定暴力団になった理由は、指定暴力団の中でも暴力的要求行為が過激で、それを市民が拒絶する武闘派だからです」 特定危険指定暴力団に指定されると、公安委員会によって警戒区域が定められます。その警戒区域内では、面会の強要やメールの送信、住居・事務所付近を歩くことさえも禁止です。これらに違反すると、警察は中止命令なしで即座に逮捕できるようになりました。特定危険指定暴力団は、厳しく取り締まられることになるのです。 今回の改正で、禁止行為が21から27に増えました。さらに、市民の委託により暴力団事務所の使用差し止め訴訟を提訴できるという適格都道府県センター制度が定められています。
自治体が条例で取り締まる動き
暴力団を取り締まる法律は、暴対法ばかりではありません。近年、地方自治体は次々と暴力団排除条例を制定しています。 「暴対法は警察vs.暴力団という構図でしたが、暴力排除条例では社会vs.暴力団という構図になっています。これは、国民に直接暴力団と対峙することを求めるのではなく、不当要求を受けた場合は、警察等の専門機関に情報提供するなどによって、警察は市民と一体になって暴力団対策を推進しようとするものです」(相原さん) 改正暴対法や暴力団排除条例など、取り締まりを厳しくしたことで、指定暴力団員は昨年だけで3000人減少したといわれています。 それでも暴力団による事件は後を絶ちません。その理由は、暴力団が潜在化しているからです。