U・Iターン者数 年間最多を5カ月で更新、8割が子育て世代…人口減対策ずばり! 温泉観光でにぎわった町の工夫と課題
鹿児島県指宿市の移住促進制度を活用してU・Iターンした人が本年度8月末時点で27世帯68人に達し、過去最多だった2023年度の29世帯60人を人数で既に上回ったことが分かった。市は助成金の対象拡大や空き家バンクの新設など近年の取り組みが徐々に浸透してきた成果として、人口減の歯止めに期待を寄せる。 【写真】U・Iターン者数 年間最多を5カ月で更新、8割が子育て世代…人口減対策ずばり! 温泉観光でにぎわった町の工夫と課題
指宿市への年間移住者はコロナ禍の21年度に6世帯10人まで落ち込んだが、22年度は14世帯42人に増加した。市は23年度から空き家バンクのほか、祖父母や配偶者の両親が同市在住の人向けに「ウェルカム支援金」を創設。住宅の新築や購入に対する助成金の対象者をUターン者まで拡大したことも追い風となり、過去最多を更新した。 本年度も順調に増えており、年間目標に掲げる30世帯75人に早くも達しそうな勢いだ。移住者の8割は40代までの子育て世帯が占めるという。助成金などの利用も増加が見込まれることから、市は市議会9月定例会の一般会計補正予算案に増額分として約1039万円を計上している。 □■□ 県外から移住を検討中の人向けの「お試し滞在サポート事業」の使い勝手が良いことも人気の理由だ。県内では多くの自治体が独自に用意する体験用住宅を利用する方式だが、指宿市は市内の宿泊施設に1泊以上することなどを条件に、交通費や滞在費の一部を補助する。移住促進だけでなく「観光地としての指宿を知ってもらう」狙いだ。
同市開聞川尻の古民家に暮らす梨井星太朗さん(32)、麻耶さん(31)夫婦も同事業を利用し昨夏、石川県から移り住んだ。かつて移住先を探して全国を自転車で旅したという2人。1人3回まで交通費などの助成を受けられる点や、利用後の転入で定住準備金が交付される点など「ほかと比べても手厚い印象を受けた」。 3回に分けて計74日間滞在し、住居や勤め先を探すなど生活基盤を整えた。2人は「お試し中にいろんな人とつながり、助けられた。自然の豊かさはもちろん、地元住民の温かさが移住の一番の決め手になった」と笑みを浮かべる。 □■□ 移住希望者が増える中、住居などの受け入れ体制には課題もある。市内には約3000軒の空き家があるが、少なくとも500軒以上が老朽化などで人が住むには危険な状態という。良好な建物は所有者と調整し空き家バンク登録を進めているが、20日時点で公開中の物件は11軒にとどまる。 さらに所有者は「何かあっても遠方で駆け付けられない」「とにかく手放したい」などの理由で売却のみを条件に登録するケースがほとんど。移住者からは賃貸住宅の引き合いが強いのに対し、ニーズがかみ合わないのが実情だ。
市企画政策課は、移住希望者に対し、連携する不動産会社を紹介するなどして対応している。また多様な働き方ができる環境づくりや、転入後も交流や相談ができる体制を強化する方針で「移住者がそのまま定住してもらえるようフォローアップに力を入れたい」としている。
南日本新聞 | 鹿児島
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