西武・西口監督&森繁和氏 新春師弟対談 逆襲の25年「もう、上しかない」
就任1年目を迎える西武・西口文也新監督(52)と、元中日監督の森繁和氏(70=スポニチ本紙評論家)による新春師弟対談が実現した。西口監督にとって現役時代に投手コーチだった森氏とは「師匠」と「愛弟子」の関係。球団ワースト記録の91敗を喫して、屈辱のリーグ最下位となった昨季からのチーム再建へ、新指揮官は「もう、上しかない」と師匠の前で誓った。(取材・構成=鈴木 勝巳) 森 明けましておめでとう。いよいよ新監督の1年目だ。 西口監督(以下、西口) おめでとうございます。(キャンプ地の)南郷にはいついらっしゃるんですか? 森 必ず行くよ。俺がコーチになってから教えた選手で、お前が監督第1号だからな。いざ指揮官になってみてどうだ? 西口 楽しみですよ。言い方は悪いですけど、去年あれだけ負けたんで。もう、上しかないですから。 森 シーズンに向けて、まず後ろを決めたのは正解だ。守護神の平良。 西口 強く要望して、本人にも思いを伝えました。今の投手陣を考えた時に、圧倒的に後ろが弱い。平良が守護神に決まったのは大きいですね。これで勝ちパターンに入ってくる投手は甲斐野、佐藤隼…。外国人も獲りにいっています。 森 中継ぎは何人かでうまく回さないとな。 西口 ウチは先発は試合はつくれます。中継ぎがどれだけ踏ん張って最後の平良につなげるか。2年目の上田、羽田も候補です。 森 その先発では早々と今井を開幕投手に決めた。 西口 彼は人間的にも精神的にも成長している。「チームのために」という思いがマウンド上からも伝わってきますね。 森 俺が中日監督だった16年のドラフト(※1)で、実は今井を1位で指名しようと思っていた。即戦力で、ということで直前に柳に変えたが…。ずっと気になって見ている投手。そして目指すのは、その投手を中心にした「守りの野球」。 西口 去年がチーム打率・212(※2)と低調で、今年いきなり打てるチームになれるかというと「?」がつく。まずは守備から入って、いかに相手より1点を多く取るかということを考えたい。お互いの先発投手の力量を見ながら、試合ごとに作戦を立てていきたいです。 森 キーマンは? 西口 三塁にコンバートする外崎ですね。守備の負担を減らして打つ方で頑張ってもらいたい。二塁は若い選手で競争です。 森 その若手については監督としてどう見ている? 西口 正直、去年あれだけチャンスをもらって、確実にレギュラーをつかんだという選手はいない印象ですね。選手たちが悔しさから学んだ経験をどう生かしてくれるか。 森 秋季キャンプはどうだった。 西口 もうちょっとガツガツと、絶対にレギュラーを獲るんだ!という思いを出してほしいメンバーもいましたね。「ほんとにこいつら、去年あれだけ負けて最下位って分かってるのかな?」という感じじゃ困るので。2月のキャンプは違う姿というか、練習での振る舞いをまず見ていきたいですね。 森 4番は助っ人だろうな。一人二人、打線で軸になってくれるとありがたいよ。 西口 現状では外国人ですね。セデーニョともう一人、4番候補を獲りにいっています。カブレラ(※3)みたいなバッターがいればいいんですけど(笑い)。あとは1番。ここが本当に固まらないので…。現状で足が使える選手も少ないですし。 森 そういう攻撃面のことを考えると、投手出身の監督は大変なんだ。俺も経験があるが、どうしても分からないことが多い。ただ、去年まで2軍監督を経験しているのは大きいはずだ。 西口 2軍の時から見ていて、選手みんな体が弱いですね。「軸」の部分。キャンプでは毎日、体幹トレをメニューに入れます。 森 俺もコーチの時、(西口監督を)徹底的に鍛えたからな。プール行って、走らせて…。体の線は細いままだったけど、足腰は強靱(きょうじん)になったと思うよ。 西口 あとは「対話」ですね。接し方もそう。選手一人一人で対応の仕方、話し方、言葉のかけ方…。性格とかも全然違う。選手によって変えていかないと。そこは大事にしたいと思っています。 森 昔と今は時代が違うからな。そういう2軍監督での経験を生かしつつ、打撃や守備はコーチを信頼して頼る部分ももちろん出てくる。選手起用はどこまで我慢できるか、も大切だ。 西口 監督としては、自分の考えていることを曲げたくない、という思いもあります。今までもあまり、曲げたことはないので。 森 曲げないところは曲げない。それは俺もよく知ってるよ(笑い)。とにかく楽しみだ。5位でいい、なんて言うなよ。 西口 はい、頑張ります! ※1 10月20日のドラフト会議で西武は作新学院の今井を1位で単独指名。渡辺久信SDは「重複を覚悟していた」と話した。柳(明大)は中日とDeNAで競合も、就任直後の森繁和監督がくじを引き当てた。 ※2 昨季の西武のチーム打率.212は、57年大映の同.213を下回るパ・リーグワースト。 ※3 ベネズエラ出身の右の長距離砲。西武には01~07年に所属し02年には当時の日本タイ記録のシーズン55本塁打。西武在籍7年間で計273本塁打を放った。 【取材後記】西口監督が西武に入団した95年、森氏は投手コーチ。新宿プリンスホテルのレストランで行われた師弟対談は、和やかな雰囲気だった。 思い出話にも花が咲き、西口監督が「本当にしんどかった」と振り返ったのがキャンプ中のプールでのトレーニングだ。実は水泳が得意ではなく「泳げない人間にとっては地獄だった」。森氏も「息継ぎもできなかったからな。“沈んでろ”と言っても浮いてきたし」と笑った。その“地獄トレ”のおかげで「潜水も25メートルいけたし、泳げるようになった」。監督1年目。パ・リーグの荒波を泳ぎ切ることを森氏も期待している。(遊軍・鈴木 勝巳)