約4割が資金繰りについて「今後支障が出てくる」 前回調査から大幅増、大同生命保険の中小企業経営者アンケート約4割が資金繰りについて「今後支障が出てくる」
大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2024年6月度の主なテーマは「資金繰り」。全国の7204社の中小企業経営者を対象に、6月3日から28日にかけて訪問またはZoom面談で調査を行った。その結果、今後の資金繰りについての懸念を抱える中小企業が大幅に増えている現状が浮かび上がった。 まず、自社の資金繰りについて聞いたところ、「支障が出ている」と回答した企業は7%と、過去調査比で減少傾向。一方で、「今後、支障が出てくる」と回答した企業は41%で、同テーマの前回調査時(2023年5月)の20%から、21ポイント増加。将来の資金繰りへの懸念を持つ中小企業が大幅に増加している様子が浮かび上がった。業種別で見ると、「小売業」「運輸業」「宿泊・飲食サービス業」などで、5割弱が今後の資金繰りへの懸念を抱えていた。 次に、資金の使い道について聞いた。「理想の資金繰りの使い道」は、「人材への投資」(35%)がトップで、2位は「新規設備の導入」(31%)、3位は「運転資金の支払い」「既存設備の改修」(ともに24%)。しかし現実の使い道は、「運転資金の支払い」(39%)が最多で、以下、「仕入や外注に係る費用の支払い」(27%)、「人材への投資」「手元資金の確保」(いずれも26%)。「新規設備の導入」は17%だった。足元の「資金繰り」を優先し、「人材」「設備」など将来への投資については二の次になっている様子がうかがえる結果となった。 負担となっているコストは、「原材料費・仕入費用」(34%)が最も多く、次いで「人件費」(31%)だった。業種別では、運輸業は「燃料費」(57%)、医療・福祉業は「人件費」(59%)が最多で、業種による特徴がはっきり出た。 資金繰りについては、51%の企業が直近1年間に「対策をした」と回答。業種別では、「製造業」「運輸業」「宿泊・飲食サービス業」の約6割で何らかの対策をしていたが、対策を講じた企業でも、11%で現在の資金繰りに「支障が出ている」、50%で「今後、支障が出てくる」と回答していた。具体的な対策は、「金融機関による低利・無担保融資等」(18%)が最多、次いで「コロナ借換保証制度を利用した借入」(16%)だった。 新型コロナ関連融資の利用状況について、「融資を受け、現在返済中」と回答した企業は41%。今後の返済見通しについて、約2割が「返済が滞る懸念がある」と答えた。業種別では、「宿泊・飲食サービス業」「医療・福祉業」で3割以上が「返済懸念あり」と答えた。 主な資金調達手段は、「地方銀行・第二地方銀行からの借入」(50%)が最多、次いで「信用金庫・信用組合からの借入」(42%)だった。借入時の保証・担保は、「代表者等が個人保証」(53%)が最も多かった。経営者保証を不要とする信用保証制度については46%の企業が「制度を知らない」と、約半数の企業で認知されていなかった。 経営者からは、「仕入れ値が上がり、利益が減少する中で、金利上昇による負担増加をカバーできるか心配」(卸売業/東北)、「追加の融資を受けるため改善計画書を提出しているが、時間がかかり、すぐに資金が必要なのに間に合わない」(その他サービス業/南関東)、「コロナ融資の返済が今年からはじまり、今期の状況を見ないと今後の予定が立てられない」(情報通信業/北関東)など苦労の声が聞かれた。信用保証制度については、「よい制度だと思うので、あまり認知されていないのがもったいない」(製造業/南関東)との声がある一方、保証を受けられる条件があることや、返済自体は必要なこともあり、「ハードルが高すぎる」(小売業/九州・沖縄)との声もあった。 神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、「今回のレポートからは、昨年より続く物価高などで中小企業の体力が奪われており、資金繰りに余裕がない状況に追い込まれている企業が増えたことが明らか。今後も以前のようなデフレ・低インフレ時代に戻るとは考えにくいため、とにかく認識を改め、“価格転嫁を伴う経営戦略”“長期的な視野での財務力強化”に取り組む必要がある」とのアドバイスを寄せている。