KEIRINグランプリ初出場の岩本俊介 絶望的条件を突破し40歳で掴んだ“夢切符”
今年の顔であり、2025年S級S班所属となる9名の選手たちによる一発勝負。競輪界の一大決戦「KEIRINグランプリ2024」が30日、静岡競輪で開催となる。今回は節目となる40歳で初出場を決めた岩本俊介を紹介する。(構成:netkeirin編集部)
“流れに身を任せて” 節目となる40歳で大ブレイク
南関東の自力型選手が手薄の時代から奮闘を続けている岩本俊介。S級選手の中でも上位の成績を残してきた選手であり、GIIIでの優勝も5回を数えている。そのうち4回が松戸競輪で開催されたもの(代替開催含む)で、地元で強さを発揮する特徴がある。当サイトの連載コラム『前田睦生の感情移入』では「94期の大砲」、「怪物」と称され、そのポテンシャルの高さは早い段階で評価を受けていたことが紹介されている。 だが、そのポテンシャルの高さとは裏腹に、昨年まではGI優勝争いに名乗りを挙げる機会もなく、あと一歩の高い壁を乗り越えられず。そんな中、40歳という節目の年を迎え、今年は序盤戦から猛チャージ。初戦の4日制FIで優勝し、3月にはGIII完全優勝を含む11連勝を記録。その目覚ましい活躍ぶりはファンの間で話題となり、アオケイ長谷川記者はニュース内で「40代に突入して衰えるばかりか凄みを増している」と綴っている。 しかし、記者や関係者によるコラムやニュースで岩本が発した言葉を追ってみても「流れに身を任せて」「余計なことは考えずに一戦一戦集中するだけ」といったコメントが多く、“大きい言葉”は一切見つけられず。大躍進の前半戦を振り返るインタビューでも「他人事でアレだけどすごいなあ」と自然体で笑う。ペースを乱さず、実直に目の前のレースと向き合う選手像がある。また、千葉の選手とふざけ合っている場面やリラックスした笑顔の写真が多く、印象は柔和で朗らかだ。
絶望的条件をくぐり抜けて…賞金ランキング9位で権利を獲得!
岩本俊介のグランプリへの道を辿るとダービー準優勝がデカい。一次、二次を連勝で勝ち上がり、準決勝は深谷知広の番手を回り1着。これまで乗り越えられなかったGI準決勝の壁をぶち破り、3連勝の勢いとともに初のGI決勝進出を決めた。しかし、決勝に勝ち上がった南関東の選手は岩本のみで決勝は単騎戦に。相手は岩本以外の単騎はS班3人、平原康多を擁する関東勢などGI決勝らしい超強力メンバー。なおかつ車番は大外9番。「これは厳しい戦いになる…」というのが岩本ファンの見方だったことだろう。 迎えた決勝は関東3車の後ろに付け、打鐘では最後方に位置した。その後、最終ホームで吉田拓矢が主導権奪取を目論む一気のカマシ、岩本はここを追走。しかしバック手前で切り替えた諸橋愛と位置が被り、外並走の苦しい展開。最終2センターでも外を回らされていたが、直線に入り猛烈なタテ脚を披露し、ゴールまで伸び続けて2着を確保。準優勝でも高額賞金のダービー、シリーズを終えて賞金ランキングを4位とした。 しかし、ダービー後に優勝はなく、ビッグレースでも振るわず。結果的に賞金積み上げの勢いも失速し競輪祭直前には9位までランクダウン。そんな中で迎えた競輪祭だったが、一次予選から守りには入らずに攻めの走りを示した。思い切った仕掛けで展開を引き寄せ、脇本撃破の白星発進。二次予選でも3着に食い込み準決勝進出。準決勝ではアクシデントの影響もあり6着敗退。「脇本優勝」の結果待ちでグランプリ出場の可否が下される展開となった。 そんなヒリヒリ展開の中、岩本は千葉の仲間と鍋を囲みながら決勝を観戦していたとのこと。脇本雄太の優勝が確定したと同時に岩本のグランプリ出場が決まった。その時を振り返り「まったく実感が湧きませんが、和田健太郎さんが一番喜んでくれています」と話した。和田健太郎といえば20年に初出場でグランプリを制している千葉の先輩。年末の大舞台で先輩と同じように栄光をつかむ可能性は十分だ。