キノコの旬は秋じゃない!? 野菜の目利きに聞く「秋冬が旬の美味しい野菜」
キノコは秋が旬ではなく、1年を通して安定している工場野菜の代表格
また秋の味覚といえばキノコも代表的です。しかし日本のキノコ類は現在、全体の9割以上が工場で環境を管理しながら栽培を行う「菌床栽培」(※)。季節はほとんど関係がないのです。 ※農林水産省 林野庁「用林産物の生産動向」より 「菌床栽培は天候の影響をまったく受けないので、計画的に安定して栽培できるのが最大のメリットです。価格も安定しているので、ほかの野菜が高騰している時などは上手に取り入れるといいと思います。これからの季節は鍋料理でも大活躍しますし、夏場はマリネにしてサラダに入れてもいいですね」 もちろん現在、工場で作られている野菜はキノコだけではありません。 「最近はレタスなども工場で作られる品種が増えています。ただ現在のところは普通の露地栽培のものと比べると、平均価格でいうとまだまだ割高。ただキノコと同じく天候にまったく影響を受けないので、夏でも冬でも例えば200円だったらずっと200円です。逆に露地栽培だと150円のときもあれば、250円になる可能性もある。ですから、一概に工場野菜が高いともいえません」 さらに本多さんは野菜の価格が高騰した場合は工場野菜とともに、冷凍野菜を効果的に使うこともオススメだと言います。 「野菜には旬がありますが、今の時期でも夏野菜が売られていますし、夏でも冬野菜はあります。でも野菜はやっぱり旬の時期が一番美味しいし、栄養素も高い。例えばほうれん草は冬野菜ですが、夏の時期に旬ではない生のほうれん草を食べるのと、冬の旬の時期に収穫したほうれん草を冷凍して夏に食べるのは、どちらがいいのか? どちらが正解という話ではないですが、ちゃんとした冷凍技術があれば、冬のほうれん草を冷凍して夏に食べた方が、場合によってはいいかもしれません」 本多さんによると冷凍技術の進化は目覚ましく、現在は旬のまま栄養素を壊さずに冷凍する野菜も増えているそう。もちろん野菜によってはまだ難しいものもありますが、冷凍に向いている野菜を効果的に活用すれば、野菜が高騰した場合の節約にも役立ちます。 これから何かと物入りな季節。食費を節約したいなら、工場野菜や冷凍野菜をうまく活用するのも重要となりそうです。 撮影/小倉雄一郎(小学館)
【取材協力】
大田市場 大治(だいはる) 本多 諭(ほんださとし)さん 大学卒業後、株式会社紀ノ国屋に入社。2年間正社員として働いた後に、大田市場で野菜の仲卸業を70年以上営む家業の大治(だいはる)に入社。平成28年に代表取締役社長に就任し、「東京野菜」ブランドを推進する東京野菜普及協会の代表理事としても活躍。青果物の流通のプロとして産地の開拓など「質の良い野菜」にこだわり、旬野菜やトレンド野菜についても広い知見をもつ。
高山恵