田中圭が元気をくれる理由「“ポジティブ人造人間”になろうと決めたんです」
取材部屋に入ってくるなり「よろしくお願いしまーす!」と大きな声が飛ぶ。その瞬間、現場の空気が変わる。誰もが自然と笑顔になり、リラックスした雰囲気に包まれる。俳優・田中圭。彼は、周りを元気にする魔法が使えるみたいだ。 【全ての写真】田中圭の撮り下ろしカット 駆け出しの新人ならまだわかる。20年以上のキャリアを誇る売れっ子が、まるで新人のような元気な挨拶を欠かさないから驚きなのだ。けれど、当の本人は「ただの癖です」となんでもないことのように言う。 この明るさは一体どこから生まれているのか。そう尋ねると、意外な答えが返ってきた。
場の空気を読む力が、役を育む
9月20日公開の映画『あの人が消えた』で田中が演じるのは、主人公・丸子の職場の先輩で小説家志望の荒川。丸子を演じる高橋文哉とのとぼけた会話は、ミステリー色の強い本作の中で一服の清涼剤のような役割を果たしている。 「荒川は担っている役割そのものは物語の主軸に沿っているので、普通に演じようと思えば普通に演じられる役なんです。なので、大事にすべきポイントが最初は正直わからなくて。ふざけているのかふざけていないのか、よくわからないのが荒川という男です。たぶん真面目なところも冗談なところも両方持っている人なんだとは思います。どんな居方もできる分、どれくらいのテンション感でいくかは台本を読んだだけでは決めかねるところがありました」 キャラクターとは、自分の頭の中だけでつくるものではない。だからこそ、田中が重要視したのは現場の空気感だった。 「僕が撮影の後半から現場に入ったというのもあって、どういう空気感で進んでいる現場なのかというのは意識して見ていました。やっぱり現場によって空気が違います。台本を読んだ時にコメディ要素が強い作品と感じていたので、僕のなかにあるバラエティエンジンがマックス状態のままこの作品に入ったので、最初はギャップに驚きました。『あれ? 思ったよりコメディの雰囲気ではないな』と(笑)」 主演・助演を問わず、田中圭はとにかく出演作品が多い。彼がこれだけ多くの現場に呼ばれるのは、作品ごとにアジャストする能力が突出していることが理由の一つかもしれない。 「なので、まずは監督の居方やスタッフさんの居方を見て、なるほどこういう現場なんだなというのを掴んでいくところから始めました。その上で、荒川という役は丸子の対になる役なので、文哉くんがどういうトーンで丸子というキャラクターをつくっているのかをチェックする。それと同時に、監督が思い描いている荒川の居方も探っていました。僕の演じたい荒川と、丸子の対になる荒川、そして監督の脳内にある荒川という三者の一番バランスのいいところはどこだろうというのを段取り(リハーサル)で試しつつ、『ここはもう少し挑戦していいかな』『ここは引いた方がいいか』とさじ加減を見極めていきました」