豊富な資金で選手を呼び込みチーム強化、リーグを変えた外国人投資家 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑥】
ピッチ上の成功は世界的なスポンサー企業を呼び、ビジネスにも好影響を及ぼした。サムスン電子や横浜ゴムと大型契約を結び、ユニホームのメーカーはアンブロから米大手ナイキに衣替えした。2016年には15年間で総額9億ポンドとも言われる大型契約をナイキと結び、アブラモビッチ氏が買収する前に1億3400万ユーロだったクラブの売上高は4倍以上に膨れ上がった。 ▽身の丈を超える投資で経営破綻 チェルシーの成功にならおうと他のクラブも大金を投じて有名選手を獲得し、移籍金や年俸の高騰に拍車が掛かった。人気選手の獲得はクラブやリーグの魅力や競争力強化につながる一方、身の丈を上回る過剰投資にのめり込み、財政危機に陥るクラブも現れた。その代表が、かつて元日本代表GK川口能活も所属したポーツマスの経営破綻だ。 ポーツマスは、アブラモビッチ氏がチェルシーのオーナーとなった2003~04年シーズンからハリー・レドナップ監督のリーダーシップでプレミアリーグに昇格。最上位リーグ復帰は1987~88年シーズン以来の快挙だった。
昇格後はイングランド代表のソル・キャンベル、ナイジェリア代表のヌワンコ・カヌら実績豊富な選手を獲得し、2008年には69年ぶりのFA杯制覇を果たした。しかし、その裏で収入を上回る規模の人件費を支出するなど財務は傷んでいた。選手売却でも穴埋めできず、相次ぐオーナーの交代による経営の混乱も響き、2010年に破綻。プレミアリーグ発足後、初の汚点となった。 危機感を抱いた英政府は2011年、サッカービジネスの課題をまとめた報告書を公表し懸念を示した。「裕福なオーナーがより良いパフォーマンスを追求するために移籍金や選手の賃金に自分の資金を上乗せして提供すると、他のクラブにさらに費用を出すよう相当な圧力をかけることになる」。 リーグは各クラブに財政規律を促す新たなルールの導入を進めるようになるが、一部の大物代理人が暗躍し、移籍金は高騰を続けた。規制を逃れようとするビッグクラブとのせめぎ合いが本格化していく。