深刻な非正規問題 東京都が若者の「正社員化」促進へ本腰
安倍晋三首相は1月4日の年頭記者会見で、雇用が3年間で110万人以上増えたことや、有効求人倍率が昨年7県で過去最高を記録したことを挙げ、アベノミクスの成果を強調しました。一方で、景気回復を実感できている労働者は決して多くないようです。その背景の一つが実質賃金の伸び悩みです。これが伸びなければ、景気を押し上げる個人消費がなかなか拡大しません。国民総生産(GDP)に占める個人消費の割合は大きく、景気回復には個人消費の伸びがとても重要だといわれています。 実質賃金が伸び悩んでいる理由はいくつかありますが、なかでも労働者の非正規雇用が固定化していることは深刻な問題とされています。
若者の正社員化で独自の助成金や奨励金
東京都の舛添要一知事は、2006年9月発足の第一次安倍内閣から麻生内閣までの約2年間、労働行政を司る厚生労働大臣を務めた経験があります。そのため、東京都は今年度から「TOKYO正社員化促進計画」といった取り組みを始めています。 「昨今、ワーク・ライフ・バランスが重要視されるようになり、働いている人たちの中には必ずしも正規雇用に就きたいと考えている人たちばかりではなくなっています。例えば、定年退職後に非正規で再雇用される高齢者や、子育て中なのでパートタイムとして柔軟な働き方を選択する主婦などもいます。その一方で、安定した仕事に就きたいと望んでいるのに、正社員になることが叶わない非正規労働者もたくさんいます。東京都が始めた『TOKYO正社員化促進計画』は、正社員になりたいと希望する人たちをサポートすると同時に、企業間での情報交換の場を設けるといった、正社員化への取り組みを支援する政策です」(東京都産業労働局雇用就業部) 政府は非正規雇用労働者を正規雇用に切り替えた企業に対して、最大50万円の助成金を支給しています。政府の助成金とは別に、東京都は追加で最大50万円の助成金を独自に支給する制度を創設しました。つまり、東京都で非正規雇用労働者を正規雇用に切り替えると最大で100万円の助成金が支給されるのです。 「そうした正社員化の中でも、特に東京都が力を入れているのが若年層の正社員化です。若年層の正社員化を促進するために、『若者応援宣言事業』を創設しました。これは、35歳未満の若者を正社員にした企業に対して、一人あたり15万円の奨励金を支給するものです」(同)