トランプ次期政権下で米石油生産は減速の見通し、世界的供給過剰受け
(ブルームバーグ): トランプ次期大統領が「資源を掘りまくれ」と呼びかけ石油開発へのコミットメントを強調してきたにもかかわらず、世界的な原油の供給過剰を受け米国の石油生産は減速する見通しだ。
トランプ氏は、米国のシェール企業に生産拡大を促すと宣言し、たとえ生産者が「破産するまで掘り続ける」としてもガソリン価格は下がると支持者に訴えてきた。だが米国の生産量はすでに2年連続で記録を更新している。
ブルームバーグがアナリストやトレーダーを対象にした調査によると、米国の石油生産量の伸びは来年1年間で日量25万1000バレルにとどまる見通し。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で落ち込んだ20年以降、最も緩慢なペースとなる。
トランプ氏がこうした状況を変えるために利用できる手だてはほとんどない。探査のための連邦政府の所有地開放には時間を要する。中国との貿易戦争など同氏の掲げる政策の一部はコモディティー需要減退につながり、原油の弱気材料と見る向きが多い。
商品取引会社ハートリー・パートナーズのシニアアドバイザー、エドワード・モース氏は、「連邦政府の土地を開放しオークションにかけ、企業が応札・探査を行い石油を発見、インフラも整備するには時間がかかる」と指摘。トランプ氏の政策で生産が増えるなら、大部分は同氏の任期以降になるとの見方を示した。
ここ10年のシェールブームを担ってきた独立系の石油生産企業も大統領選後、掘削を巡る抜本的な計画変更は打ち出していない。ダイヤモンドバック・エナジーやデボン・エナジーは25年の成長率を2%以下と予測。EOGリソーシズとオキシデンタル・ペトロリアムは横ばいを見込む。
昨年のシェールオイル生産量の驚異的な成長を正確に予測したマッコーリー・グループは今年末までに生産が日量1390万バレルに達し、米エネルギー省の現在の見通しを5%上回ると予測している。
この成長にガイアナやブラジル、カナダからの新たな供給が加わることで、25年は大幅な原油供給過剰となる可能性がある。国際エネルギー機関(IEA)は世界で供給が日量100万バレルの余剰になる可能性があると警告している。