異業種アスリートが挑戦 ソチ五輪ボブスレートライアウト
もう一人、連盟関係者の熱い視線を浴びたのが、2010年の陸上日本選手権の砲丸投げで8位に入賞した実績を持つ22歳の秋本壯樹(まさき)だ。ベンチプレスで140kgをマークするなど、「100%の力が出せた」と筋肉の鎧をまとったような179cm、119kgのボディに宿る怪力を存分にアピールした。 現在は慶應義塾大学総合政策学部の5年生。試合に出場するために自主的に留年したところへ、今回のトライアウト実施を新聞で知った陸上部OBから挑戦を促され、挑戦を決意したという。 中学1年生の時から投てき種目一筋で、東京・成城高校2年次のインターハイでは2位に入った。日本選手権で実績を残しても、五輪は「自分にとって夢また夢の舞台だった」という。 「若い時は世界と勝負したいと思っていましたけど、大学生になれば自分の力がどのくらいの位置にあるのかが分かってくる。砲丸投げで勝負できなかった分だけ、ボブスレーで勝負したいという新しい夢が膨らんできたんです」。 同じ投てき種目の円盤投げで活躍した宮内優が、挑戦わずか5か月で前回のバンクーバー五輪のボブスレー代表になったことも刺激になった。ボブスレーに関する知識がゼロだったため、すぐにレースの映像をユーチューブで見て勉強を重ねた。 ボブスレーをテーマにした映画『クール・ランニング』のDVDを借り、カルガリー五輪で活躍した、ウインタースポーツとは無縁のジャマイカ人選手たちの姿に自分自身を重ね合わせた。 「コメディーチックな映画でしたけど、ゼロからのスタートという意味では僕と同じ状況。最後は感情移入して観ちゃいました(笑)。まだマシンを生で見たことがないので、ブレーカーとしての自分をイメージするこが難しいんですけどね」。 今回のトライアウトでの合格者は、5人程度が予定されていて、今月31日に日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟の公式ホームページ上で発表される。テストのデータに、当該選手の年齢や出身競技などを加味して合否を判定する。山本忠宏ボブスレー強化部長は「期待したいと思わせる選手が複数いた」と、異なる競技からチャレンジしてきた勇敢な大男たちに思わず笑顔を浮かべた。 果たして、サクラは誰に咲くのか。 晴れて合格した選手たちは6月30日から大田区内で始まる強化合宿に参加する。以前から代表候補に名前を連ねている先輩選手たちと、来年1月15日まで長野県内での氷上練習や2度の海外遠征などで切磋琢磨しながら、最終的には3人のブレーカーと1人の補欠に絞り込まれる代表の椅子を目指す。 (文責・藤江直人/論スポ)