月給50万円でホテル幹部候補募集、米フォートレス系が低賃金に一石
(ブルームバーグ): 宿泊業界で人手不足が深刻化する中、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループ傘下で国内4位の客室数を持つマイステイズ・ホテル・マネジメントは幹部候補生の募集を始める。月給50万円と業界平均の約2倍の待遇で、宿泊業界以外からも人材を呼び込む狙いだ。
幹部候補生の育成プログラムは27歳までの四年制大学卒業同等者が対象で、新卒者だけでなく就業経験者も応募できる。契約社員として旅館やホテルと、本社の料金設定やマーケティング、営業などの部門で経験を積み、3年目にはマネジャー職に就く。手腕が認められれば4年目から正社員となる。マネジャーになる前に8年程度の現場経験を積むことが一般的だったが、短期間でのキャリアアップを可能とすることでホテル経営に関心の高い人材獲得を狙う。
厚生労働省の2023年の賃金構造基本統計調査によると宿泊業および飲食サービス業の平均給与は25万9500円で、マイステイズが提示する50万円はこの水準を大きく上回る。背景にあるのは深刻な人手不足だ。帝国データバンクが23年 4 月に実施した調査では、宿泊業の6割で人手が新型コロナウイルス禍前の水準に戻っていない。
ホテル業界は「過渡期を迎えている」と大阪学院大学のテイラー雅子教授は指摘する。ホテル経営などを研究する同氏は、一律の給与体系がスキルのある人材を雇う機会を失う原因になっていると話す。今後高度人材を呼び込む動きは広がると見ており、「たたき上げで昇格した上級管理職が新しい制度で入ってきた社員に飛び越されるという現象は起こるだろう」と話す。
呼び水
労働力人口が減少し人材獲得競争が激しくなる中、優秀な人材を集めるためには待遇の引き上げが欠かせない。労務行政研究所の調査によると、24年度は東証プライム上場企業152社の87%(速報値)が全ての学歴で初任給を引き上げ、過去10年で最多となった。23年度は71%(同)だった。マイステイズの山本俊祐会長は「IT業界やコンサルなども受けている人にも振り向いてほしい」と意気込む。