建築基準法が生活を便利にする? コンビニ新設とエリア規制
規制緩和は「買い物難民」の救済につながる?
ことさらコンビニが注目されるのは、「買い物難民」の存在が背景にあります。 地方だけではなく都市部でも高齢者が年々増え、遠くまで買い物に行くことが困難という住民が多くなりました。また店舗の大規模化もあり、近所の小さな商店では食料品などが満足に手に入らないようになっています。そのため、自宅から歩いて行ける範囲内にコンビニを求める声があります。 つまり、前出のような住居専用地域への出店規制が、買い物難民問題の解決を遠ざけている、という指摘です。 国土交通省が政令を改正したことにより、来夏の施行時から第1種・第2種の低層住居専用地域でも条件を満たせば、建築審査会に諮ることなく出店が可能になりました。 「政令改正で、来年夏には第1種・第2種の低層住居専用地域にコンビニやスーパーが出店できるようになります。しかし、今回の政令改正は『買い物難民』を救済することを主眼に置いたものではありません。今回の政令改正では特定行政庁や建築審査会の負担を軽減することを目的としています」(同) 政令改正によって、建築審査会の審査を経なくても第1種・第2種低層住居専用地域にコンビニなどが出店可能になるのは事実ですが、これまで準住居地域では開設ができなかった自動車修理工場なども対象とするかなどの検討が進められています。 「今回の政令改正は、どういったものなら建築審査会の審議が必要なくて済むのか? といった観点から、これまでに建築審査会で許可された事例、許可されなかった事例を調査しています。そこからコンビニやスーパーを開業する場合の騒音や振動、排気などの細かい条件を決めます。だから、政令改正は行政や建築審査会の負担軽減が主目的といえます」(同) 建築審査会で審議をするには、行政職員が事前に現地調査をしたり関連資料を集めたりする必要があります。有識者への事前説明や、出店側へのヒアリングなど、相当な手間と労力、時間がかかるのです。行政の負担軽減のみならず、出店のスピードアップという効果もあるでしょう。 いずれにしても、住居系地域でコンビニ出店の規制が緩和されます。住宅街にコンビニが開店することで便利になると感じるか、人の出入りや騒音などの増加で生活環境が悪化すると感じるかは人それぞれでしょう。政令改正によって、私たちの生活に大きな変化が起きることは間違いないようです。 (小川裕夫=フリーランスライター)