「PFI」は財政状況変化に対応できない―中村健・愛知県西尾市長に聞く(下)
見直し案をつくる前に市民の意見を聞きたい
── PFIを見直して個々に事業をしていくのでしょうか。 そう決めたわけではありません。現在、市役所内にPFI事業の検証プロジェクトチームを立ち上げて、工事を止めればどれぐらい影響があるかや、今後の見直し案などを検討しています。チームの職員は通常業務との兼務ですが、いずれ専任の態勢にします。事業者との交渉もプロジェクトチームを通してしており、PFIからこれだけは切り離しましょうとか、全体に内容を縮小しましょうなどということは、事業者との交渉の中で決められていくことです。 ── 市民の意見は今後どう反映されていくのでしょうか。 見直し案をつくる前に、市民には聞いておきたい。それがまたワークショップになるのかアンケートになるのか、どういう形はまだ決まっていませんが、その意思決定に市民が参画したかどうかは非常に大事になります。 聞き方も工夫しなければなりません。例えば「これが欲しいかどうか」という聞き方もあれば、「これは心配だから止めてほしい、いらないんじゃないか」という聞き方もあるでしょう。100人に聞けば100通りの希望があるでしょうから、全部を聞き入れることはできませんが、ある程度の数を聞いていく中で傾向が見えると思っています。
※住民の一部は今年2月、前市長を相手取り、PFI事業への公金支出差し止めを求めて名古屋地裁へ住民訴訟を提起。公判が進む中で市長が「見直し派」へと代わるという事態となっています。今月13日に開かれた3回目の公判では、市側の弁護人が市長の交代やプロジェクトチームの検証結果を踏まえて、次回11月の公判までにあらためて準備書面などを用意するとしました。一方、住民側は市長の交代を歓迎しつつ、今回のPFIの違法性や根本的な責任を追及したいと声を上げています。※ 役所というのは一度方向性が決まると、そこから逆方向に変えていくことは難しい組織です。時間をかけて、思いも入れてやってきたことであればなおさら。これが唯一の正解だとして、進め方に柔軟性がなかったと感じています。 議会でも、契約案件に対して賛否が15対11で分かれました。西尾市ではそこまで賛否が拮抗することはあまりなく、このPFI事業をきっかけにいろいろな火種やしこりができてしまいました。私は根本からこれが間違っていると言っているわけではありませんので、今後、議会を含めてもう少し広く合意できる形でまちづくりを進めていきたいと思っています。