女子サッカー育成年代の“基準”上げた20歳・藤野あおばの原点。心・技・体育んだ家族のサポート
メンタリティの礎を築いた小学生時代「気持ちは熱くても、頭は冷静に」
――2022年にベレーザに加入し、同年のFIFA U-20女子ワールドカップでは18歳で飛び級ながら背番号10をつけて、チームを準優勝に導きました。ベスト8のフランス戦で、延長戦の終了間際に得たPKを決めて土壇場で追いつき、その後のPK戦でも冷静に決めてチームを導いた試合は特に印象に残っています。その勝負強さはどのように身につけたのですか? 亜希子:兄も姉もあおばも、「やる」と決めたら覚悟を持って臨むタイプでした。その点はお互いを尊敬して認め合って、3人がいい感じに影響し合っていたと思います。3人とも負けず嫌いなので、それぞれ「自分が一番」だと思っていると思っていたんですが、後々聞いてみたら、あおばがサッカーで注目していただくようになった時も「お兄ちゃんが一番上手い」と話していましたし、兄も「いや、あおばが一番だ」と私に言っていました。本人の前で言わないのは、やっぱり負けず嫌いだからだと思いますけど(笑)。 ――プレッシャーがかかる場面で常に冷静でいられるメンタリティも、きょうだい間で培われたのでしょうか。 亜希子:それは、小学校の時にヴェルディのサッカースクールに通っていた時にお世話になったコーチの影響が大きいと思います。あおばは負けず嫌いな性格が出過ぎて裏目に出てしまうこともあったのですが、そのコーチが「どれだけ気持ちが熱くなっても、頭は冷静に」と、根気強く指導し続けてくださったんです。そのコーチと出会ってから、あおばはすごく変わったと思います。その後は、サッカーに限らず、何かをする前に頭の中でいろいろシミュレーションをして、「こうなりたい」という目標から逆算して段取りを決めるようになりました。指導者との出会いには本当に恵まれていたなと思います。 <了>
[PROFILE] 藤野あおば(ふじの・あおば) 2004年1月27日生まれ、東京都出身。女子サッカーのイングランド1部(女子スーパーリーグ)・マンチェスター・シティWFC所属。日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織であるセリアスで育ち、トップ昇格は叶わなかったが、進学した十文字高校では年代別代表でも規格外の存在感を放ち、2022年にベレーザに加入。スピードに乗ったドリブルと左右両足から放たれる外国人選手並みのシュートインパクトで1年目から主力として活躍し、翌シーズンからWEリーグで2年連続ベストイレブンに選出。22年8月のFIFA U-20女子ワールドカップでは飛び級で背番号10をつけ、準優勝の原動力になった。同年9月になでしこジャパンに初選出され、主力に定着。23年夏のFIFA女子ワールドカップではコスタリカ戦で日本人史上最年少ゴール記録(19歳180日)を記録。24年2月のパリ五輪アジア最終予選の北朝鮮戦ではオリンピック出場権がかかった試合で決勝ゴールを決め、今夏のパリ五輪ではスペイン戦で女子のオリンピック最年少ゴールを奪取。大会後にマンチェスター・シティに3年契約で移籍することが発表された。
インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]