注目のライドシェア、タクシーのMaaSはどうなっている?【MaaSがもたらす都市変革】
S.RIDEに対応したタクシー車両
2023年はライドシェア導入の議論が一気に進んだ年でもあった。その流れを締めくくるように12月20日には岸田首相が、来年4月からライドシェアを解禁すると公表した。この日行われた第3回デジタル行財政改革会議で、「デジタル行財政改革中間とりまとめ(案)」が決定したことを受けたものだ。 まずはタクシーが不足する地域や時間帯に限り、タクシー会社が運行を管理するという条件で解禁するとのこと。地域や時間帯については、タクシー会社の配車アプリのデータを活用するという。さらに年明けからは、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うための法制度について、議論を開始していくという発言もあった。Uber(ウーバー)などを海外で使ったことがある人は、アプリで配車、目的地設定、決済のすべてを行えることを知っているだろう。日本でもこれに似た方式の導入が予想できる。つまりデータのみならず配車や決済についてもアプリが活用されると見ている。 では日本のタクシー配車アプリはどうなっているのか。ここでは東京を中心に北は東北から南は九州まで展開し、東京都内ではタクシーの3台に1台が採用しているという「S.RIDE(エスライド)」を紹介する。 ◆タクシーを呼ぶことを優先、サブスクやAI活用 S.RIDEは、ソニーグループのAIをはじめとしたIT関連の技術を活用して開発された。 同グループのDNAとして、創造的な技術、製品、サービスを通じて社会に貢献するというイノベーションの精神があり、タクシーはDXが遅れている業界のひとつと認識したことから、2018年に会社を立ち上げ、翌年アプリをリリースした。タクシーの走行距離は1日250~300kmになるそうで、1万台集まればデータはかなりの量になる。S.RIDEでは走行データや周辺データを収集することで、需要予測に役立てるだけでなく、グループ内のモビリティ事業の開発にも活用していきたいとしている。 インターフェースにも、ソニーらしさが感じられる。筆者もそうだが、タクシーを使うのは忙しいときが多い。そういう時に、いかに簡単に快適に呼べるかにこだわった結果、 ワンスライド方式に行き着いた。ウーバーでは目的地を設定しないと配車ができないのに対し、S.RIDEではまずタクシーを呼ぶことを優先した。車両が来るまでに目的地を入力すれば良いので効率的だ。タッチではなくスライドとしたのは誤動作が少ないから。「S.RIDE」というサービス名にもこだわりが込められている。 Googleマップでの連携イメージ サブスクメニュー「S.RIDEプレミアム」も注目される。他社では追加料金を要することもある優先配車を使い放題としたもので、通常の5倍となる10分間、空き車両を探し続ける。さらにプレミアムでは、高級ミニバンの指定配車、予約配車も使える。
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レスポンス 森口将之