「上皇さまのおかげ」宮本亞門、要再検査通知をスルー後に発覚した前立腺がん“全摘”の背景
「まさか自分はがんにはならないだろうという気持ちがあったので、悔しかったし、すごくショッキングでした。自分のことを過信しすぎていたんです」 【写真】病室のベッドで酸素マスクをつけるも、気丈にグーサインを出す宮本亞門 と言うのは、演出家の宮本亞門さん(66)。 がんが見つかったきっかけは、2019年に出演した健康番組『名医のTHE太鼓判!』(TBS系)で、人間ドックを受診し、前立腺に影が確認された。急きょNTT東日本関東病院で精密検査を受け、前立腺がんと診断されている。
要再検査の通知は2度あった
前立腺がんは男性の罹患(りかん)率トップのがんで、50代から増え始める。早期の場合は自覚症状が出にくいのが特徴で、彼もまた、 「ちょっと尿が出にくいなと思うことがあったくらい。でも年を重ねればそうなるものだろうと思っていたんですよね。痛みも違和感も何もなく、突然の診断で狐(きつね)につままれたような気分でした」 と振り返る。しかし、今思えば確かにサインはあった。定期的に受診していた人間ドックで、「要再検査」の警告を2度にわたり受けている。 「PSA(前立腺特異抗原)の数値が高く、がんの可能性もあると思いますので再検査を受けたほうがいい、と書いてありました。でも僕はそれほど深刻に受け止めてはなくて、きっと食べすぎだとか、軽い注意程度だろうと受け流していて。 ちょうどそのころ仕事が忙しく、元気を出さなきゃとステーキばかり食べていたことがあったので、そういう意味では心当たりがあって。ストレスがたまっていた時期でもありました」
診断後、壮絶な孤独を感じた期間
前立腺がんの診断後、さらに他へ転移がないか検査を進めることに。最終的な結果が下されるまでのこの期間は「魔の不安定期間」といわれ、精神的なダメージを受ける患者も少なくない。宮本さんもまた不安な時間を過ごしたと語る。 「みんな僕にどう接していいかわからなくて、その緊張感がどんと自分に向けられた。広い宇宙に一人ぽんと放り出されたような気分で、壮絶な孤独を感じた瞬間でした。 僕自身もなかなか覚悟がつかず、部屋で1人ずっとネットを見てはいろいろ想像をして、どんどんマイナスのほうに考えを巡らせてしまう。やめようと思っても、思考がぐるぐる回り続けて止まらない。それが2週間近く続きました」 検査の結果、他に転移はなく、最終的にステージ3になりかけのステージ2と告知を受けた。「魔の不安定期間」から解放されたのはそのときで、「ようやく目標ができた気がしました」と話す。医師の言葉も背中を押した。 「がんになって余命のカウントダウンをするような気持ちになっていた僕に、先生は明るく『亞門さん、これからですよ、一緒に頑張りましょう!』と言ってくれた。あの言葉をかけられたときのうれしさというのはもう格別でした」 医師の説明によると、がん細胞が薄皮まんじゅうのような皮で包まれていて、今にもあふれ出しそうな状態にあるという。まだぎりぎり早期がんの段階ではあるものの、あまり悩んでいる時間は残されていない、ということだった。 放射線療法と手術療法という2つの選択肢が突きつけられた。おのおのメリットもあればデメリットもある。セカンドオピニオンとして、放射線療法の専門病院も訪ねている。 「手術療法は勃起不全や尿漏れなどの後遺症が考えられるという。一方放射線療法は後遺症は少ないけれど、男性ホルモンを抑制する薬を投与することで、感情的に不安定になったり、弱気になったりすることがあるというお話でした。 演出家というのは物事を冷静に判断しなければいけない仕事で、感情が上下していたら務まらない。今は演出家が灰皿を投げたらおしまいな時代だし(笑)、何より人を傷つけたくはなかったから」