「上皇さまのおかげ」宮本亞門、要再検査通知をスルー後に発覚した前立腺がん“全摘”の背景
改名して気持ちも楽になった
手術を経た2019年秋、亜門から亞門に改名をした。新たなスタートを切り、心境の変化があったか聞くと、 「亞は文字の真ん中が窓のように開いている旧字体で、改名して、なんかいい意味で風が吹いたかな。ちょっと楽になったというか、いろいろなものをどんどん認めたくなるし、楽しめる。 年を取ると考えがこり固まってしまいがちだけど、まったく違う分野のことだって怖がらずにいくらでもやっていいじゃないかって思えてきました。なので舞台に限らず何でもやります、お仕事くださいって、大きな声で言ってるんです(笑)」 演出の仕事に加え、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』で俳優にも挑戦。さらに「まだまだやりたいことがあって」と目を輝かせる。 「今考えているのは、どうやったら楽しく死んでいけるか、幸せな死に方を演出すること。例えばみんなを集めてセレモニーをしたり、今まで学んできた演出を生活に取り入れて、新しい生前葬のようなものができないか考えていて……。 がんと闘った経験は僕にとって勲章です。死というものを目の前に見たことで、生きることにエネルギーが出てきて、ますます日々が面白くなってきている。まだ生きられるということは、自分にまだ役目があるということだと思う。 今は気分がどんどん上がってきていて、前以上にエネルギッシュに、存分に生きていこうという気持ちでいます」 宮本亞門(みやもと・あもん)●演出家。1958年生まれ。ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎などジャンルを問わず幅広く作品を手がける。テレビドラマ初出演としてNHK朝ドラ『ブギウギ』で作詞家の藤村役を演じる。2024年6月アイスショー『氷艶Hyoen2024 -十字星のキセキ-』の上演を控えている。 取材・文/小野寺悦子