シナリオライターが遊ぶ『Mouthwashing』―宇宙の果てで描かれる殺菌しきれない感情のぶつかり合い
頼れるリーダーにして船長のカーリー、地上にいた頃からカーリーと仲が良かった副操縦士のジミー、内気な性格の船医アーニャ、ぶっきらぼうだけど仕事ができるスウォンジー、若くて元気なだけが取柄のインターン君ダイスケ。
彼らの人間関係を、衝突前のパートをカーリーの視点で、衝突後のパートをジミーの視点で、カットバックしながら眺めていくことになります。
地獄のような状況に追い詰められた彼らが錯乱することで話を動かす……といったホラーあるあるの安易な手法は極力避けており、本作ではとにかくこのカーリーとジミーの関係性をねっとりと描きます。なんなら、SF設定も閉鎖された宇宙船も、ただの舞台装置に過ぎません。
ゲーム画面は徹底して息苦しい宇宙船内に固定しておきながら、キャラクターたちの会話から、彼らが自分たちの仕事や人生とどう向き合っているかがジワジワと浮かび上がってきます。
特に、ジミーのカーリーに対する視線は暑苦しいくらいで、ゲームの半分くらいは彼の心象風景をなぞっている時間なのではないかと思うくらいです(そのパートもただの超現実的なカットシーンにしてしまうのではなく、鬼ごっこやFPSといった感じで、ビデオゲーム的な遊びを入れようとするところに、開発のサービス精神が感じられます)。
彼はジミーに見つめられ、何を感じていたのでしょうか? 嫉妬、羨望、友情、殺意、親愛、連帯感……褒められたい、わかってもらいたい、横に並んでいたいという気持ちも含まれていそうです。
所詮カーリーにとっては手早く登り詰めただけの斜陽企業だったのかもしれませんが(それもあくまでジミーの見立てに過ぎませんが)ジミーたちにとっては最後の砦だったわけです。
本作のモチーフは『Mouthwashing』。口に含んでうがいして、ペッと吐き出せばスッキリするあの定番商品です。そんな感じで今までのことをさっぱり吐き捨てられたら良いんですが、いかんせん今の状況はそうも言ってられず、アルコール代わりに呑んでないとやってられません。それが劇薬だとわかっていても。
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