当時県が推進した輸出促進事業の一環で、清水港から船積みされる前の山梨県産シャインマスカット＝2022年9月、静岡市清水区

　2021年8月の中部横断自動車道（甲府―清水間）の全線開通で期待された清水港からの青果物の海外輸出拡大が思うように進んでいない。開通直後は行政による「実証実験」が相次ぎ、ブドウなどの輸出量は増えたが、昨年以降は急ブレーキがかかっている。 　名古屋税関の統計によると、中部横断道が開通した21年の輸出量は、果実および野菜は21万534キロ、山梨県産のシャインマスカットなどブドウは425キロ、モモは6058キロだった。22年には果実および野菜は前年比8・6％増の22万8672キロに、ブドウは同66・6倍の2万8338キロ、モモは同57・4％増の9540キロに急増した。 　しかし、23年以降は輸出が急減。同年は清水港からのモモの輸出量はゼロ。静岡県マーケティング課の担当者は「22年の急増分はほとんどが実証実験だった」と認める。23年度以降は輸出促進の旗振り役は民間の「山の洲（くに）輸出物流構築協議会」（事務局・静岡VF）に移っている。

清水港からの青果輸出量推移

　国土交通省関東地方整備局によると、中部横断道（甲府―清水）の開通1年後の時点で、山梨県身延町周辺の断面交通量（中部横断道と国道52号の合計）は、1割程度増え、静岡・山梨両県の往来には貢献しているとみられるという。 　同課の担当者は「港湾の利用拡大は後背地の経済圏の大きさや船便数など複合的な要素もある。地道な努力を積み重ねたい」とする。静岡市中央卸売市場で青果卸売業を営む静岡VFは、外気に触れずに倉庫からコンテナに荷積み可能なドックシェルター付き冷蔵倉庫を国の補助で22年度に整備した。通関手配が市場内で可能になるため、さらに輸出がスムーズになる保税蔵置場の取得を本年度は目指す。