2つの「リバウンドメンタリティ」が導いた逆襲への序章。柏U-18は大宮U18との激闘を制してホームで連敗回避!
[9.7 プレミアリーグEAST第13節 柏U-18 2-1 大宮U18 日立柏総合グランド] 【写真】どこのユニ? 本田翼さんのサッカーコーデに「可愛すぎやろ!」「透明感がすごい」 たとえミスをしてしまっても、それを引きずらずに次のやるべきことへ目を向け、好プレーでやり返す。たとえ試合に負けてしまっても、下を向き過ぎることなく次の勝利へと目を向け、チームの士気を高めていく。問われるのはそういう姿勢。いわゆる“リバウンドメンタリティ”を、太陽王子はこの日の90分の中で力強く披露してみせた。 「今年のユースの特徴というか、彼らの性格で考えると、勝ちというのが何よりもエネルギーになるというか、彼らの勇気に繋がると思うので、そういう意味では大きな1勝だなと。後期の一発目で負けて、『うーん……』という想いがあったと思いますけど、これも1つのリバウンドメンタリティというか、1週間でよくここまで持ってきたなと思います」(柏レイソルU-18・藤田優人監督) 7日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第13節で、柏レイソルU-18(千葉)と大宮アルディージャU18(埼玉)が激突した一戦は、FW吉原楓人(3年)が2ゴールを叩き出した柏U-18が2-1で競り勝ち、力強く勝点3をもぎ取っている。 「前回のアントラーズ戦は落としてしまったので、『今回は勝たないといけない』という共通認識があった中で、入りも結構良くやれていましたね」とMF加茂結斗(1年)が話したように、前節の鹿島アントラーズユース戦に敗れたホームチームは、立ち上がりから好リズム。前半7分と8分に加茂が続けてフィニッシュ。前者は大宮U18のGK清水飛来(3年)のファインセーブに、後者はクロスバーに阻まれたものの、まずは1年生アタッカーが先制への意欲を前面に打ち出す。 9分も柏U-18。加茂のスルーパスから、抜け出した吉原のシュートは清水がキャッチ。29分も柏U-18。加茂の左クロスにFW澤井烈士(2年)が合わせたヘディングは、ここも清水がビッグセーブ。さらに31分にはMF藤谷温大(3年)のパスから、エリア内へ侵入した澤井が倒されてPKを獲得。だが、澤井が自ら蹴ったキックは、右のポストを直撃。一方的に攻め続ける中で、なかなかスコアを動かせない。 “起点”は折れなかった28番のリバウンドメンタリティ。33分。果敢なプレスで澤井がボールを奪い切ると、加茂は右へ展開。MF戸田晶斗(3年)の折り返しを加茂が叩いたシュートはDFに弾かれるも、「常にどこに来てもいいように準備はしていて、良いところにこぼれてきた感じでした」という吉原が押し込んだボールはゴールネットへ到達する。“澤井の守備”が呼び込んだ先制弾。柏U-18が1点のアドバンテージを手にして、最初の45分間は終了した。 前半のシュート数はゼロ。「もっと前での守備を準備してやってきたんですけど、ちょっと後ろ重心になっちゃったかなと思います」と丹野友輔監督も話した大宮U18は、5-4-1気味になってしまっていた全体の重心を上げるマインドセットをハーフタイムに徹底すると、相手陣内でのボール奪取がそのまま結果に直結する。 後半9分。前からのプレスを受けた相手GKのパスミスを見逃さず、高い位置でボールを拾ったMF田中奏良(2年)が後方へ戻し、MF菊浪涼生(3年)は完璧なクロスをファーサイドへ。飛び込んだMF丹野豊芽(3年)のヘディングは鮮やかにゴールへ吸い込まれる。「クロスからの得点は狙っていた形でした」(丹野監督)。1-1。アウェイチームがファーストチャンスをきっちり仕留め、スコアを振り出しに引き戻した。 狙い合う“次の1点”。17分は大宮U18。キャプテンのDF大西海瑠(3年)、丹野と回したボールを、MF神田泰斗(1年)が枠へ打ち込んだシュートは柏U-18のGK栗栖汰志(3年)がファインセーブで回避。19分は柏U-18。吉原がDFラインの裏へパスを通し、走った加茂のシュートは清水がストップ。お互いに際どいシーンを創出する。 20分の主役は「クラブユースでも何も結果を出せなくて、鹿島戦でPKを外してしまったので、『ここでやっておかないと』とは思っていました」というナンバー11。MF長南開史(中学3年)からパスを引き出した加茂はマーカーをダブルタッチでかわし、「楓人がうまく抜け出していたので、出せば入るだろうというイメージで」スルーパスをグサリ。「加茂くんが前を向いた瞬間に『行ける!』と思って」ラインブレイクした吉原はGKとの1対1も冷静に制し、ゴール右スミへボールを送り届ける。「夏にいろいろな経験を経て、ちょっとサッカーがわかってきたなという気がします」と指揮官も評価を口にした吉原はこれでドッピエッタ。2-1。再び柏U-18がリードを奪う。 大宮U18も簡単には引き下がらない。失点直後の22分。DF中澤凜(1年)の持ち出しから、神田が右サイドを剥がして中へ送ると、FW野口蒼流(2年)はシュートを打ち切れなかったものの、惜しいシーンを。さらにDF小坂真聖(1年)、FWエドワード真秀(1年)に加え、中学3年生の注目株・DF熊田佳斗も交代でピッチへ送り込み、勝点獲得への執念を滲ませる。 柏U-18の腹は据わっていた。DF福島大雅(3年)とDF上原伶央(1年)のセンターバックコンビも、MF黒沢偲道(3年)とDF沼端隼人(2年)のドイスボランチも、丁寧なポジショニングで的確な守備を徹底。「この試合が近づくにつれて、全員がリーダーシップを取って、声を出すことができるようになったので、『今週は勝てるんじゃないかな』というのは少し感じるところがあったんです」(栗栖)。ピッチ内で声を途切れさせることなく、より圧力を掛けてきた相手の攻撃を1つずつ、丁寧に、凌いでいく。 3分のアディショナルタイムが過ぎ去り、タイムアップのホイッスルが聞こえてくる。「1人1人がチームのために、勝利のために走って、やるべきことをやってくれたことが本当に大きかったと思いますし、それが勝利に繋がったと思います」(栗栖)。ようやく弾けた黄色の笑顔。シビアな展開にも我慢強く、粘り強く戦い抜いた柏U-18が、連敗回避となる白星をホームで手繰り寄せる結果となった。 試合後。指揮官が「今日一番良いシーンだったなと思います」と真っ先に挙げたのは、先制点を呼び込んだ“澤井の守備”だった。「もちろん2点、3点ぶち込む選手は欲しいですけど、ピッチの中でミスした後にもう一度自分で立て直せるリバウンドメンタリティを、彼は今回ものすごく表現してくれたなと。普通の選手だとあそこで落ちて、プレッシャーも行けないと思うんですけど、そこで『くそっ!』と思ってギアを上げてくれて。ああいった選手、ああいった男にみんななってほしいなと思いますね」(藤田監督) チームメイトからも澤井への称賛が止まらない。「前半にあったPKを外した烈士が、その直後に切り替えてプレスに行って奪って、そこから得点に繋がったというところで、そういうリバウンドメンタリティはもっと磨いていかないといけないなと、今日のゲームで烈士から学びました」(栗栖)「澤井くんの守備がチームを良い方向に持っていってくれました。僕は前節でPKを外した後に、澤井くんぐらいのリバウンドメンタリティは見せられなかったと思っているので、そこは凄く尊敬しますね」(吉原) もちろんPKを決められればベストであったことは間違いないけれど、結果的に澤井が発揮した“リバウンドメンタリティ”がチームに火を付け、勝利の一端を担うことになるのだから、サッカーというスポーツは実に興味深く、実に難しい。 加えて前節の敗戦を受けて、チームが醸し出した“リバウンドメンタリティ”も、この日の結果には小さくない影響を与えているという。「今週は本当に良いトレーニングをしていたんです。何が良かったかと言うと“スタートで出る組”じゃない、12人目から22人目までの選手が紅白戦でもセットプレーの練習でもものすごく雰囲気を作ってくれたんですよ。彼らにはいつも『チーム、チーム』と言いますけど、サッカーが上達したというよりは、心の部分が成長した1週間だったというか、『ただの1週間じゃないな』という感じはしていました」(藤田監督) キャプテンも指揮官の言葉に同調する。「特に2日前のセットプレーの練習から、明らかに鹿島戦の週とは雰囲気が違って、『みんなやってやるぞ』という感じが出てきて、そこは中でやっていた自分が一番感じるところで、1人が声を出すだけではなくて、みんながリーダーシップを持ってやれていたので、どれだけ練習の雰囲気や質が大事なのかということは、この試合で改めて思いましたね」(栗栖)。その雰囲気がしっかり勝利に結び付いたことも、彼らの一体感をより強固にしていくはずだ。 2つの“リバウンドメンタリティ”が導いた、日立台での貴重な白星。『ただの1週間じゃない』時間を共有した、諦めの悪い指揮官と、諦めの悪い選手たちが、真剣に狙う頂上の景色。太陽王子がここから期す逆襲、要注目。 (取材・文 土屋雅史)
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