「あんなのテレビじゃない」と批判された中山秀征を救った「ナオちゃん」の思わぬ行動とは? 熱愛報道の裏話も明かす
ナオちゃんと“夏っぽい”大物歌手の熱愛報道が出たときは…
誰もが経験する“日常の遊び”をテレビにした、当時としては斬新な番組。 これが、多くの人が語ってきた『DAISUKI!』評でしょう。ただ、僕なりにもう少し深掘りさせてもらうと、この番組の凄さは、テレビなのに“日常”を感じさせる、その技術や演出にあったと思います。 そもそも、日常生活にテレビカメラが入ったら、それは非日常です。ドキュメンタリー番組だって、カメラが回ったら、取材対象者は少し演技もするし……。撮られることが仕事のタレントは、なおさら“演じてしまう”もの。 ところが、『DAISUKI!』のスタッフは“演じさせない”演出が抜群に上手かった。 たとえば、番組の代名詞ともいえる“街歩きロケ”では、出演者を後ろから映す「バックショット」を多用していました。背中って、どうしても隙が出るし、カメラを意識していないから自然と素に近いトークになるんです。 そして、もう一つ、大きな効果があって……。実は、このバックショット多用の演出は「視聴者に4人目の出演者になって欲しい」という考えのもと、演出陣が知恵を振り絞って生み出した“発明”とも言えるものでした。 僕、松本さん、ナオちゃんと同じ目線で街の景色を見たり、会話を背中越しに聞いたりすることで、テレビを観ている人も、僕らと一緒に街を歩いているような気持ちになれる。平成初期のテレビで、VR映像のような“参加型”を意識していたそうです。 背中越しに街歩きをするシーンは、その後、街ブラ系番組の「定番の画」になっていますが、もしかしたら、その意図や効果は、それほど広く知られていないし、作り手の方でも深く理解している人は多くないかもしれません。意識しないほど定着した手法になった、とも言えますね。 他にも、「説明ナレーションを入れない」「テロップでコメントのフォローをしない」など、日常の雰囲気を身近に感じてもらうため、あえて“引き算をする”細かな工夫も施されていました。 僕自身はというと、番組内のトークでは常に日常感を意識していました。 例えば、ナオちゃんに大物歌手との熱愛報道があった時のこと。観ている人は、絶対にその話を聞きたい(もちろん僕も松本さんも! )。そんな時、『DAISUKI!』のトークはどんな感じになるかと言えば……。 まず、僕が「あぁ、夏休みだね~ナオちゃん。こんな時のBGMは?」と軽く振りを入れます。するとナオちゃんは「ん~。サザンかなぁ」なんてトボけてくれる。肝心なことを言葉にしていなくても、ナオちゃんの表情や声のトーンで「噂の彼とは、うまくいってるな」という雰囲気は伝わります。伝わったら、それ以上は踏み込まない。膨らまさない。わかる人にはわかるし、わからない人にも楽しそうな雰囲気は香ってくるもので……。 ポイントは「香る」で止めておくこと。実際の日常会話だって、実は細かい言葉よりも雰囲気で、相手の伝えたいことを感じとることが多かったりしませんか? こんな風に、『DAISUKI!』では、トークでも“日常の香り”を大切にしていました。 今なら、番組を観ながらSNSで「ナオちゃん、うまくいっているんだね」とか、「中山、今の結構攻めたな~」とか実況しながら、“香り”の解釈を共有できます。何気ない会話の考察もできて、当時以上に番組を楽しめそうです。ただ、当時はX(ツイッター)もインスタもなかった時代。観ている人ひとりひとりが、それぞれの解釈で“香り”を楽しむしかありませんでした。 でもだからこそ、「4人目の出演者」としてじっくり番組に入り込み、僕ら3人が感じていた「楽しい空気」を深く共有できたのかもしれません。 *** 【『DAISUKI!』で学んだ、明るく生きるヒント】 ・「楽しませる」ではなく「みんな一緒に楽しむ」 ・引き算の演出で「日常」を香らせ「空気」を共有する *** 『いばらない生き方 テレビタレントの仕事術』では、伝説の深夜番組『DAISUKI!』が放送当初バッシングを受けたことも明かされている。中山秀征、飯島直子、松本明子のトリオが逆風を跳ね除け、番組を成功させた秘訣に迫る。 【もっと読む:釣りのロケでも「私、釣りって嫌~い」と平気で話す飯島直子…「男 1・女 2」のジンクスを破って番組がヒットした理由】 *** 中山秀征(ナカヤマ・ヒデユキ) 1967年生まれ。群馬県出身。テレビタレント。14歳でデビューして以来40年以上にわたり、バラエティ番組や情報番組の司会、俳優、歌手として活躍している。 Book Bang編集部 新潮社
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