両親「裁判で明らかに」 野々市の中学生いじめ自死訴訟、初弁論 市側は請求棄却求める
●金沢地裁 2021年2月、野々市市布水中1年の女子生徒=当時(13)=がいじめを受けて自ら命を絶った問題で、生徒の両親が市に7227万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が9日、金沢地裁(土屋毅裁判長)であり、市側は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。両親は初弁論後、「何もかも隠す野々市市に、私たちは何度も心が踏みにじられました。裁判で少しでも明らかになっていけばと思います」とのコメントを出した。 初弁論では生徒の父親が意見陳述し、自死から3年半がたった現在も消えない悲しみを吐露した。「娘はいじめの苦痛を何度も教員に訴えた。教員らの目前で繰り広げられたにもかかわらず、誰一人止めてくれなかった」と涙ながらに訴えた。 生徒の両親は初弁論後のコメントで、市側が請求棄却を求めたことについて「野々市市の教育者の代表として、胸を張って正しかったと言える主張を聞いてみたい」と言及した。 ●具体的主張は「今後」 一方、野々市市側は代理人弁護士も含め出廷せず、傍聴した市教委の大久保邦彦教育長が弁論後に報道陣の取材に応じた。大久保氏は「大切な命が失われたことに改めて哀悼の意を示します。審理が始まったが、真摯(しんし)に受け止めて対応していく」と述べた。 「いじめが自殺の原因となった」とする第三者調査委員会の報告書の内容は受け止めるとした一方、具体的な主張については「今後準備書面で明らかにする」とした。 生徒の両親は6月に提訴。訴状によると、生徒は主に20年9月以降、複数のクラスメートから仲間外れにされたり、悪口を言われたりするなどいじめを繰り返し受けた。生徒は学校にいじめを訴えたが、学校は的確な対応をせず放置したとしている。 生徒の自死を巡っては、市教委が設置した第三者調査委員会が昨年2月、29件の行為をいじめと認定する報告書を公表した。学校側の対応が不十分だったと指摘している。 ●市教育長「一つ一つ丁寧に対応」 方針明言避ける 野々市市教委の大久保教育長は9日午後、市役所で報道陣の取材に改めて応じた。大久保氏は今後の方針について明言を避けながら「一つ一つ丁寧に対応していく」との考えを示した。 第三者調査委員会の報告書で学校側の対応が不十分だと指摘されていることについて、大久保氏は「そこはしっかりと尊重し、これからも受け止めていく。それに尽きる」と述べた。 訴状では、「生徒が適応障害を発病していた」など第三者委の報告書にはなかった指摘も盛り込まれている。大久保氏は「準備書面を作成していく中で、いろいろなことが審理されていくと思う」と述べるにとどめた。