【玄関リフォームの注意点】車いすのためのスロープで介助者が大怪我する例も…バリアフリー化は介助者のことも考えて慎重に、「一気に最終形を目指すリフォーム」はNG
住み慣れた我が家で最後まで暮らしたい──そんな思いを実現するためには、老朽化やバリアフリー対応を考慮したリフォームが有効だ。しかし、その道には思わぬ落とし穴が潜んでいる。多額の費用をかけたにもかかわらず、リフォームによってかえって住みづらくなるケースも少なくない。そこで今回は、改築のプロが「玄関リフォームで避けるべきNGポイント」を解説する。 【写真】玄関リフォームの注意点を解説した一級建築士の阿部一雄氏。自身も車いすを利用する
段差解消目的のスロープで車いす介助者が大怪我
実家で両親と同居する千葉県在住のEさん(58)は、車いす生活になった父のため50万円をかけて玄関にスロープを設置した。だが、これが大失敗だった。 「自宅の入り口から玄関までの間に十分な距離がなく、スロープの勾配が急になってしまったんです。雨の日に父を病院に送るために玄関先で介助をしていたら、私がスロープで足を滑らせて転倒してしまって。右腕を骨折してしまいました」(Eさん) バリアフリーのリフォームをする場合、本人だけではなく介助者のことも考えて慎重に進める必要がある。 自身も車いすを利用する一級建築士の阿部一雄氏が解説する。 「スロープを設置する際、『10分の1勾配』と言って1メートルの高さに対して10メートルの長さを必要とします。理想的には12メートル以上の長さが欲しいのですが、距離を十分に確保できずに急勾配のスロープになっているケースが見受けられます。こうしたスロープは車いすで上りにくいうえ、雨が降った時に介助者が滑って非常に危険です」 そういった場合には、「スロープではなく車いす用の昇降機を設置した方が費用を抑えられて安全」だと指摘するのは一級建築士でリフォーム事情に精通する尾間紫氏。 「車いす用の階段昇降機は月1万~1万5000円ほどでレンタルでき、補助金が出る自治体もあります」
前出の阿部氏が言う。 「介護生活を想定するあまり、多くの人が過剰なバリアフリーのリフォームに陥りがちです。重要なのは、段階を踏んで改修をしていくこと。現在、足腰が弱くなり杖をついているならスロープよりも段差を照らす足元のライトや手すり、段差に滑り止めを施す方がいい。一気に最終形を目指すようなリフォームはするべきではありません」 数多の失敗事例に学び、正しいリフォームで終の棲家を手に入れたい。 ※週刊ポスト2024年11月22日号