リシュモン傘下高級ECのYNAP、アリババとの合弁会社を終了か
中国のECブームが下火になった理由とは?
20年には、リシュモンとアリババ、そして当時ラグジュアリーECとして急成長していたファーフェッチ(FARFETCH)の3社が、グローバルな戦略的パートナーシップを契約を締結。リシュモンとアリババはファーフェッチに3億ドル(約471億円)ずつ投資したほか、ファーフェッチが新たに設立した合弁会社ファーフェッチ・チャイナにも2億5000万ドル(約392億円)ずつ投資して、合計25%の株式を取得。ファーフェッチは提携の一環として、「ラグジュアリー・パビリオン」、同アウトレット専用プラットフォーム「ラグジュアリー ソーホー(LUXURY SOHO)」、同越境ECサイト「Tモールグローバル(TMALL GLOBAL)」に、ラグジュアリー専門のショッピングチャネルを開設した。
しかし、アリババが独占禁止法に違反したとして、21年4月に中国の国家市場監督管理総局が182億2800万元(約3827億円)という巨額の罰金を課したことや、中国版インスタグラム「シャオフォンシュウ(Xiaohongshu、小紅書、通称RED)」などのSNSやライブ配信での販売が台頭したことで、「Tモール」をはじめとするECは厳しい競争に直面。その後、コロナ禍が落ち着いて実店舗への客足が戻ったこともあり、中国でのECブームは下火となった。
YNAP売却を進めるリシュモン
情報筋によれば、YNAPは資金やリソースをコア事業およびより収益性の高い地域に集中させるため、中国市場からの撤退を計画しており、フェンマオ事業の終了はその一環だという。しかし、ほかの理由として、リシュモンがYNAPの売却を進めていることもあるだろう。
リシュモンは23年8月、YNAPの株式の47.5%をファーフェッチに売却することに合意。しかし、取引が成立する前にファーフェッチが経営破綻の瀬戸際にあることが判明し、同年12月に韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)が買収。これを受けてリシュモンは取引を中止し、24年1月にはYNAPの株式を100%売却することも検討していることを明らかにした。その後、5月に発表した24年3月期決算の説明会で、ブルクハルト・グランド(Burkhart Grund)=リシュモン最高財務責任者は、「(売却の)プロセスは進行しており、複数の当事者がかかわっている」と発言。24年12月末までに取引が成立する予定だという。