歌あり笑いありの新翻訳 夏川椎菜が3度目の深作組で名作に挑む
役者と声優、アーティスと活動が良い相乗効果を生み出している
――舞台主演は今回3回目。声優やアーティスト活動と演劇の違い、それぞれの魅力とはなんでしょう。 2022年に『オルレアンの少女』に出演し、他の活動に活かせることがすごくたくさんあると感じました。そもそもこういう世界に興味を持ったきっかけが中学演劇なんです。子どもの頃に「これ、ずっとやっていたい!」と思った気持ちが呼び起こされ、良い作用になって他の活動に精神的・物理的に活かされています。魅力で言うと、声優の仕事は目の前にお客様がいることが少ないので、技量を試す場所、自分がいろいろなところで学んだことを活かす場所というイメージです。ライブや舞台はお客様が目の前にいるぶん、その場限りの瞬間を楽しむ場所。準備段階ではテクニックも気にするけど、最終的にはそれよりもその場の感情の動き、お客様とのエネルギーの交換を楽しむ場所。その上で、やることが歌か芝居かという違いです。 ――深作さんがコメントで座長としての成長を讃えていました。ご自身で感じる成長や変化はありますか? 大胆になったなと思います。『オルレアンの少女』の時にどうしても動けなくて。声優の時はセリフを発しながら動くことが基本的になかったので、セリフと動きが連動していなかったんです。最初は思い切ってできなかったのが、『オルレアンの少女』、『未婚の女』を経験して、徐々に感覚がわかってきました。「こうすればやりやすい」、「ここまでやっても別に怒られないんだ」とわかってからは、自分で台本を読んでいるときに動きを考えられるようになりました。考えて、動きながらセリフを言えるようになったのが一番大きな成長だと思います。 ――今後挑戦してみたい役や作品があったら教えてください。 自分が見にいくときはコメディを選びがちなんです。コメディはやりたいなと思っています。新喜劇や漫才、コントもすごく好きで、自分のイベントでも近いことをやっているんです。コントも突き詰めると演劇的なので、一回挑戦してみたいなという気持ちがあります。 ――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。題材で「難しそう」と感じる方の背中を押せるようなポイントもあれば、合わせて教えてください。 今までの深作組を見てくださった方だと、「また難しい感じなのかな」とか、ドイツの戯曲を翻訳でというところで理解が難しいと思われるかもしれませんが、今回は本当に見やすくなっていると思います。 台本を開いて驚いたのが、モノローグがほとんどないこと。『オルレアンの少女』や『未婚の女』はモノローグだらけでしたが、今回は会話劇。場面が移り変わったり抽象的な描写が多かったりするわけでもないので、すっと理解できると思います。そこに歌や笑える演出が入ってくるので、すごく見やすいんじゃないかなと思いますし、楽しみにしていただきたいです。 でも、相変わらずとてもメッセージ性の強い戯曲だし、今やることに意味がある。見る方によって違う感想を抱くお芝居になっていると思います。私は「深作組の演劇を見にくる時は、楽しみにというか考えにきてください」とよく言うんですが、それは変えずに、「自分の考えが変わるかもしれない」、「自分の考えを確かめにきた」という気持ちで見にきてくださると、我々役者としてもやりがいがあるなと思います。 取材・文・撮影:吉田沙奈 <東京公演> ノラ-あるいは、人形の家- 公演期間:2024年5月23日(木)~2024年5月26日(日) 会場:銕仙会 能楽研修所