歌あり笑いありの新翻訳 夏川椎菜が3度目の深作組で名作に挑む
ノラの感情を歌に乗せて表現するシーンも
――今回は作品の舞台を現代に移していますが、見どころはどこになりそうでしょう。 セリフの裏に隠された思い、そのセリフを言った理由や意味など、何重にもレイヤーが重なっているようなセリフがすごく多いです。まだ稽古中ですが、役者同士の目の動き、体の動きで補完していくような感じになると思うので、一人ひとりの細かい部分まで注目してもらえたら嬉しいです。あとはエミーという異質な存在が舞台上にずっといるので、お客様にどう感じていただけるかこちらも楽しみ。あと、ノラは歌を歌うシーンが何ヶ所かあります。ミュージカルとまではいきませんが、彼女のその時の心情に寄り添って歌うので、楽しみにしていただけたらと思います。 ――全体を通して楽しみなキャラクターや注目してほしいシーンがあったら教えてください。 まだ稽古が進んでいないのでわからないことも多いですが、トルヴァルと対峙するシーンですかね。何ページにもわたって話し合いをするシーンで、演劇的には何かの動きがないといけないと思ってしまうけど、どう演出されるのか楽しみです。ある意味声優としての本分が活かせるシーンでもあるのかなと思います。おそらく派手に演出が入ることはなくて、声だけでトルヴァルと話し合わないといけないし、話し合いの中でノラの感情がいろいろな方向に移り変わっていくのを表現しないとならない。私が声優として活動してきた中で培ったものが活かせる場所がたくさんあるんじゃないかと思っています。 ――『未婚の女』も能舞台での上演でした。空間や会場の魅力をどんなところに感じましたか? 能舞台に入ってみると、神様に見られているような感じがすごくあります。役者も観客の皆様も、自然と集中させられてしまう。照明だけでも目が吸い寄せられてしまうような吸引力があると気がます。『未婚の女』でも思ったんですが、劇が始まると、お客様の視線の食いつき方が普段とまた違う感じがするんです。没入とも違うけど、集中して見てもらえるというか、一言一句が鮮明に伝わっている、不思議な感覚があります。お客様が舞台を囲むような形になっていていろいろなところに目があるのも理由かもしれませんが、集中して見ざるを得ない環境という気がします。実際は床も軋むし、足袋を履かないといけないから気をつけないと滑るし、きっと難しいと思うんですが、それ以上に味方してくれる。それを『未婚の女』で感じたので、今回はなんの心配もなく、純粋に楽しみにしています。