「樗沢(樗澤)」と書いてなんと読む? 樹木由来の名字を解説します。
樗沢・樗澤(ぶなざわ)
新潟県妙高市付近に「樗沢」という名字があります。旧字体を使用して「樗澤」とも書きます。そして、「樗」というあまり見慣れない漢字を「ぶな」と読み、「樗沢」で「ぶなざわ」と読みます。ブナの木が茂っていた沢に因む名字でしょう。 しかし、「樗」には本来「ぶな」という読み方はありません。漢和辞典を引くと、音読みは「チョ」、訓読みは「おうち」と出てきます。そして、ミツバウツギ科の落葉小高木である「ごんずい」のことだとあります。またセンダンの古い名ともあります。いずれにしてもブナの木ではありません。 ブナの木は水分を多く含んでいるため腐りやすく、加工後に変形しやすいことから建材としてはあまり利用価値がありませんでした。そのため漢字では「橅」と書きました。実は樗(おうち)の木もあまりに役に立たなかったことから、「ブナ」と「オウチ」の漢字が混同されたようです。 高度成長期、ブナは利用価値が乏しかったことから次々と伐採され、代わりにスギが植林されました。その結果、スギ花粉症が増えたのです。 そしてブナの原生林は人里離れた奥山に残り、今では秋田県の白神山地にブナの天然林が広がっています。このブナの森は、今では多くの野生動物が生息する豊かな森林として知られています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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