親はなぜ叱る…? “叱る依存”を脱するには…臨床心理士に聞く
人は叱られても、実は効果や学びはなく、ただ恐怖から逃れるために、その場の行動を変えているだけだと、臨床心理士の村中直人さんは解説する。 そもそも人には「規範から外れた人を叱りたい」という”処罰欲求”があり、叱る側は快感を得て、どんどんエスカレートして「叱る依存」になることも。どうすればいいのか?『<叱る依存>がとまらない』という著書もある、臨床心理士・村中直人さんに聞いた。
◆叱られても成長や効果はない?
まず最初に知っていただきたいのは、相手のためと思って叱っても、叱られた側の学びや成長の効果は期待できないどころか、ほとんどないと言ってもいいということです。 重要なのは、実際は効果がないが、その場では叱られた側の行動が変わって、非常に効果があるように見えてしまうことです。叱られた側はすごくストレスがかかる状態です。動物でいうと襲われた状態で、深く考えていたら殺されてしまうので、もう何も考えずに「逃げるか」「立ち向かって戦うか」をすぐに選ばなきゃいけないんです。 なので、叱られたお子さんは行動が早くなり、戦うだったらすぐに反抗するし、逃げるだったらとりあえず言うことを聞くことで恐怖、ストレスから逃げるわけです。 本当の意味で学ぶことが難しい状況を作ってしまっている。だから何度叱られても、結局同じことをする。 叱る側は、これだけ叱っても何でわからないの?とすごく不満を感じる。 なお、この場合の「叱る」とは言葉を使って、恐怖、不安、苦痛などネガティブな感情を与えることで、相手の行動を変えよう、コントロールしようという行為を指しています。 感情的に怒るか、相手のためを思って冷静に言うかといった「叱る側」の感じ方ではなく、言われた側が恐怖や苦痛などネガティブな感情を持つどうかです。
◆人には「叱りたい」欲求がある
きつく言って相手にストレスをかけると、すぐに相手の変化がみられる。これは叱る側にとって成功体験、ものすごいご褒美なんですよね。心理学用語で言うと自己効力感。さらにもう一つすごく大事なご褒美があって、「処罰感情」を満たすことなんです。 悪いこと、規範から外れたことをしている人を見ると、罰を与えたい、苦しめたくなる欲求が人にはあることが知られています。 ある研究では、悪いことをした人をみて、罰を与えたいと思っている状況では、脳の中のドーパミンというものを出す回路が活性化しているというデータもあります。 もう脳レベル、生理的なレベルの欲求だということですね。 人は赤ちゃん時代からこの欲求を持っているとも言われている。叱るという行為には、その処罰したい欲求を満たす側面があるわけです。