「レズビアンを理由に迫害を受ける恐れがある」ウガンダの女性は、かろうじて裁判で救われた 関空で「帰れ」→難民認定されず→有識者は話も聞かず【あなたの隣に住む「難民」①】
アフリカ東部ウガンダに住むマリアさん(仮名)宅に、警察官が踏み込んだ。この国の刑法は同性愛を犯罪とし、終身刑を規定している。当時30代のマリアさんは、この家でレズビアンの仲間と一緒に暮らしていた。 入管、同性愛迫害理由に難民認定 国に勝訴のウガンダ30代女性
逮捕され、棒のようなもので激しく殴られた。手術を受けて7カ月入院したが、今も下半身に残る傷は深い。 「また牢屋に入れられるか、殺されるのでは」 外国に脱出しようと、ブローカーに依頼し、パスポートと日本の商用ビザを取得する。「欧州諸国はビザが出ないと言われた。自由になれるなら、どこでもよかった」。こうしてマリアさんは、日本を目指した。(共同通信編集委員=原真) ▽来日直後に収容 2020年、関西空港に到着。入国審査で渡航目的を疑われた。「私は性的少数者で、母国で迫害された」と訴えたが、出入国在留管理庁の係官は「帰れ」と繰り返す。 「衝撃を受けた。その他のことは、よく覚えていない」 そのまま、大阪出入国在留管理局に収容された。助けを求めて来た日本で、身柄を拘束されるなど、想像もしていなかった。 難民認定を申請したものの、1カ月足らずで不認定とされた。異議を申し立て、「口頭意見陳述」を求める。有識者の難民審査参与員に話を聞いてもらう手続きだ。難民審査の〝一審〟は出入国在留管理庁の職員が担当するのに対し、〝二審〟は第三者の立場である参与員が意見書をまとめ、最終的に法相が認定するか否かの結論を下す。
参与員の判断に期待したが、口頭意見陳述は却下された。「申立人の主張が真実でも、難民となる事由を何ら包含していない」。参与員は異議自体も退けた。 国外退去を命じられたマリアさんは、不認定の取り消しを国に求め、提訴した。 ▽待ちに待った判決 大阪市のNPO法人「RAFIQ(ラフィック)難民との共生ネットワーク」の田中恵子代表理事は、マリアさんの収容直後から面会に通った。身柄拘束を一時的に解く「仮放免」の許可が出たものの、就労を禁じられ、いつ再び収容されるか分からない。マリアさんに住まいを提供し、弁護士と協力して医療記録を用意するなど、全面的に支援した。 2023年3月、待ちに待った判決が出る。大阪地裁は「原告はレズビアンであることを理由に迫害を受ける恐れがある」と判断。マリアさんは、ようやく難民認定された。 「うれしかった。RAFIQが助けてくれたおかげ。日本語を勉強して、お年寄りを介護する仕事に就きたい」。マリアさんはほほ笑んだ。 ▽入管は入り口を閉じようとする