<ワールドカップ>コートジボワールの強さの裏に「虎の穴」
■ミモシフコムの成功によりアカデミーが乱立 ミモシフコムの成功を受け、国内にはアカデミーが乱立している。その数は200とも600とも言われ、協会でも正確には把握していない。また、アカデミーと称するものの、無償で寄宿舎まで提供できる組織は、ミモシフコム以外にない。保護者から指導料を徴収するアカデミーまであるという。かつて、中学生世代の最高の素材は、ミモシフコムにおおむね集約されていた。ミモシフコムが、国内最高のアカデミーであることに変わりはないが、現在は状況が異なっている。ただし、国内でジュニア世代の育成の重要性が広く認識されたことは、コートジボワールのサッカーの底上げにつながることでもある。 ミモシフコムが、規律を重んじることも、代表に好影響を及ぼしている。現在ミモシフコムでヘッドコーチの職にある、フランス人のジュリアン・シュヴァリエは、「アカデミーで重視しているのは、規律であり、これが選手たちの長所」であることを強調する。そのため、欧州のクラブが、好んでこの国の選手をリクルートするとも言われる。しばしば、ブラックアフリカのチームの弱点として、規律の欠如が指摘される。だが、ミモシフコム出身選手は、今なお代表の多数派であり、彼らが代表の規範となり、代表を規律形成に大きく貢献している。 ただ、ヤヤ・トゥーレら「黄金世代」のビッグネームが他国に脅威を与える一方で、彼らに続く世代が順調に育っておらず、代表の高齢化を指摘する声も多い。実際、代表チームに占めるアカデミー出身選手の数は減少し、アセック・ミモシフコムに、かつての勢いはない。それでも、このW杯に関して言えば、故障の回復が心配されてはいるが、選手としてピークを迎えようとするヤヤ・トゥーレを始め、アカデミー初期世代の集大成をなさんとする彼ら黄金世代が「今」、そこにいる。 (文責・木村卓二/TVディレクター)