俳優・松村北斗のハマる魅力 人気監督のもと猛スピードで飛躍
6人組アイドルグループ・SixTONESとして絶大な人気を博す一方、2021年放送「カムカムエヴリバディ」で朝ドラ初出演、新海誠監督のアニメーション映画『すずめの戸締まり』(2022)では声優デビューを果たすなど俳優として活躍も目覚ましい松村北斗。先ごろ公開された上白石萌音とのダブル主演映画『夜明けのすべて』は公開3日間で観客動員13万人、興行収入1億8,620万円を突破する大ヒットスタートを切った。本作を中心に、松村の俳優としての魅力を考察する。(文・浅見祥子) ※一部『夜明けのすべて』の内容に触れています。本編ご鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします 『夜明けのすべて』松村北斗メイキング&場面写真 俳優・松村北斗を意識したのはいつだろう? 2012年の映画デビュー作『劇場版 私立バカレア高校』以降、『坂道のアポロン』(2018)、『劇場版 きのう何食べた?』(2021)、『ライアー×ライアー』(2021)など出演を重ね、アーティストとしての彼を知らない自分にとっても、何となく気にかかる存在ではあった。
多くの視聴者に「俳優・松村北斗にハマった!」と言わしめたのは、2021~2022年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」だろう。1925年、ラジオ放送の始まった日に生まれた安子、その娘るい、るいの娘ひなたによる100年の家族の物語だ。
松村が演じたのは3世代のうち最初のヒロイン、上白石萌音演じる安子の相手役である雉真稔(きじま・みのる)。繊維会社の跡取りで商科大学に席を置く、硬派なハンサム。なぜそんなに七三分けが爽やかにキマるのか? 品があって優しく、自由な心を持つ立派な人間性を備えていながら奥ゆかしい。「カムカム」の松村は、そんな稔さんそのもの。上白石との相性も抜群だった。今でも、安子が「稔さんっ」というときの声を思い出すだけで泣きそうになる。そこには安子の、愛する彼の名を口にするときの甘い響きがあったから。朝ドラのヒロインらしい素直で一生懸命な安子との恋が実りますように! と、多くの視聴者が女子学生みたいな思いで二人を見守ったはず。観る者の心をわしづかみにする“アタリ役”。俳優にとって、出会うべきときに出会うべき役と巡り合った幸福を改めて思わせる。