『RRR』だけじゃない! 40を超える映画から謎の超大国インドの魅力を存分に味わおう!
――さらにはヒンドゥー教とイスラム教の対立もある。女性も生きづらそうですが、生理ナプキンをテーマにした映画(『パッドマン』)も作られたり、エネルギーを感じます。 本を読んでいると、自分の足元までインド沼が来ているような気持ちになりました。タイトルも秀逸ですね。 宮崎 『インド沼』のタイトルや構成は編集者のアイデアなんです。本書にぴったりのタイトルで気に入っています。 インドで映画が国民的な娯楽として発展したのは、テレビが高価すぎて普及しなかったからです。経済状況が良くなった頃には誰もがスマートフォンを持つようになったので、今ではサブスクの配信を見ていますよ。 ――なるほど! テレビの影響が少なかったので、今でも映画文化が残っているんですね。 宮崎 チケット代も安いんですよ。インドの平均チケット価格は0.81米ドルです。日本だと12.77米ドルですから、かなり違いますよね。映画を見るのが庶民にとって日常的な娯楽だったので、スマホが入ってきても映画産業は続いていて、今でも年間2000本近い映画が製作されています。 ――インドは多言語国家といわれますが、映画産業にはどんな影響があるのでしょう。 宮崎 ヒンディー語、タミル語、テルグ語、カンナダ語、ベンガル語など、言語が使われている地域ごとに映画を製作するので、必然的に本数が増えるんです。 例えば日本でインド映画人気に火をつけた『ムトゥ踊るマハラジャ』はタミル語ですし、『RRR』はテルグ語、『きっと、うまくいく』はヒンディー語というように、ひと口にインド映画と言っても、もともとの言語は違います。 インド映画には踊る場面がいくつか入っていますよね。多言語国家ですから、言葉で説明するよりも踊るほうが観客にわかりやすいんです。また、ラブシーンであってもキスは忌避されるので、情熱的に踊ることで愛情を表現できます。そもそもインドの演劇観では踊りも演劇の一部という伝統もあります。 ――昨年は『RRR』が世界的に大ヒットして、挿入歌『ナートゥ・ナートゥ』のダンスもはやりました。最近のインド映画には、どんな傾向がありますか。 宮崎 昔のインド映画は、名画へのオマージュというか、欧米のヒット作をモチーフに使っているものもありました。どんなモチーフでもインド映画風になりますから、それはそれで面白かったんですが、最近はオリジナルの作品が増えました。 その一方、ヒンディー語の映画を作るボリウッドが、予算をかけすぎてハリウッドのようになった結果、あまりウケなくなってしまった。最近はタミル語で作られた歴史物の映画がヒットしていますね。モチーフとして神話が出てくる作品は、ずっと人気があります。