『RRR』だけじゃない! 40を超える映画から謎の超大国インドの魅力を存分に味わおう!
沼る、という言葉がある。それが持つ魅力にどっぷりハマり、抜け出せなくなることだ。『インド沼』(インターナショナル新書)はあまたある「沼」の中でも広くて深いインド沼へ読者を誘(いざな)う。著者の宮崎智絵氏に聞いた。 【書影】『インド沼 映画でわかる超大国のリアル』 * * * ――本書では、歴史はもちろん、カースト制、宗教対立など14のトピックを取り上げています。まず、宗教社会学者である宮崎さんがインドにハマったきっかけを教えてください。 宮崎 たまたまテレビで見たガンジス川の光景に驚いたんです。熱心に沐浴する人々を見て、「こんなに強い信仰を持つ人がいるインドとはどんな国なのか行ってみたい」と思うようになりました。 夢がかなったのは1980年代後半、大学生のときです。海外個人研修という自由度の高い制度を使い、バックパッカーとして、インドを旅しました。当時のインドは「世界中を旅した人が最後に来る所」といわれていて、私のように初めての海外滞在がインドなのはとても珍しかった。おかげで先輩バックパッカーの方々には、大変良くしてもらいました。 ――実際に旅して、インド沼へさらにハマっていったんですね。 宮崎 ますます興味が湧きました。学部では歴史専攻でしたが、インド研究をするために大学院では社会学へと専攻を変えて、インドの宗教と社会について、研究を始めました。私はヒンディー語圏の聖地バラナシを研究対象にしましたが、カースト制度が比較的残っている南インドを選ぶ人も多いです。 ――本では、大ヒットした映画『RRR』とイギリス植民地時代のこと、恋愛と結婚、教育など、さまざまなテーマが映画と関連づけて書かれているので、とても読みやすかったです。 宮崎 宗教人口でいうとヒンドゥー教が79.8%、イスラム教が14.2%、ほかにキリスト教、シク教、仏教などの信者がいて、圧倒的にヒンドゥー教が多いです。インドは14億人を超える大国ですから、イスラム教徒も2億人くらいはいるわけです。 カースト制度があるのはヒンドゥー教で、多少緩くなってきているとはいえ、複雑な階級システムとして、まだ存在しています。カーストの序列に入らない、人口の10~15%を占める不可触民(ダリット)などと呼ばれる人たちが、大学入学や公務員試験で優遇される法律もできました。 場合によっては同じ点数でも高カーストは不合格、低カーストは合格になることもあるので、高カーストからは不満も出ています。