Absolute area山口諒也と606号室円花が語る、楽曲制作へのこだわり、2マンへの想い
〈君に使った愛情にお釣りは出なそうだし〉という歌詞に一瞬で心を掴まれた(山口)
―山口さんは606号室のどういったところに惹かれたりしますか? 山口:ちょっとこう、自然に円花さんにフォーカスすると、ピアノのサウンドがどちらかと言うとバラード寄りな楽曲が好きなのかなと感じるんですが、結構シンセの音も使うじゃないですか。その音が特徴的だし、606号室さんの色というか、楽曲のキャラクターを作る大きな存在なんじゃないかと思っていて。 円花:めっちゃ嬉しいです。ありがとうございます。リードギターがいない分の役目をしっかり果たそうとは思っていて。いちばん大事なのはヴォーカルなんですけど、リードギターじゃなくてリードピアノとして、メロディーでバンドを引っ張っていくことはちゃんとしたいと考えているんですよね。 山口:ピアノの奏でるリフ、イントロや間奏のメロディー、凄く印象的だなと思ってます。そこがめっちゃ頭に残るし。「未恋」もそうですけど、僕らが作りたくても作れるようなじゃい部分でもあるので、凄いな、って。 円花:でも、今まで作ってきた全曲、計算はそんなにしていないんです。聴いてきた曲で印象に残ってるモノが頭の中にあるから、それを上手く組み込んでブラッシュアップして出す、みたいなことがいちばん多いですね。ピアノが入ってるバンドだと結構バッキングで弾く楽曲が多かったりもすると思うんですけど、リードギターが弾くようなリフをピアノが弾いたらカッコいいんじゃないか、という話はメンバーともよくしています。 ―この2マンへ向けて、ということで山口さんは606号室の「未恋」を弾き語りカバーして、Xにアップされてましたね。 山口:歌わせていただきました。 円花:ありがとうございます。めっちゃ良かったです。 ―カバーすることで、改めて良さに気付いたところもあったりされますか? 山口:それで言うと歌詞の部分ですね。僕も凄く近いんですけど、 (表現が)回りくどいというか(笑)、“好き”ということだったり、楽曲のタイトルにはなってますけど“愛してる”だったり、そういうことをあまりストレートに伝えない歌詞が多いなと思って。たぶん、そういう気持ちを伝えられなくなっちゃった人に向けているというか、“好き”や“愛してる”はもう伝えられないんだけど、これだけ好きという想いがある、これだけ愛してたんだ、という気持ちを書いてるんだろうな、と。しかも、その表現の仕方が凄くキレイなんですよ。例えば、「愛してる」の冒頭の一説、〈君に使った愛情にお釣りは出なそうだし〉は一瞬で心を掴まれましたね。 円花:(作詞している)昇栄が喜ぶと思います(笑)。情景が浮かびやすいんですよね。その〈君に使った愛情にお釣りは出なそうだし〉とかも主人公の表情が浮かぶし、他にもここは昼だな、夜だな、みたく考えながらピアノを入れてたり。私は歌詞から浮かんだ情景から物語を作って、ひとつの映画みたく曲にしていってますね。 ―お二人にお聞きしますが、バンドをやるようになってから、曲を作るようになってから衝撃を受けた1曲ってあります? 山口:……ありすぎるな(笑)。 円花:ハハハハ(笑)。ひとつ言うなら、谷口喜多朗さんがやられているTeleというソロプロジェクトの「花瓶」ですね。イントロがストリングスで始まるところ、そこから急にピアノへ切り替わる場面、どちらも2回ウェイってなるんです(笑)。しかも、インタビューで「何からインスピレーションを受けましたか?」という質問に対して「ポケットモンスターの戦闘シーンに流れてくるBGMを参考にしました」と答えられてて。これはヤバい、そっから取ってくるんや!?って。 山口:僕は選ぶのがめっちゃ難しいので逆にシンプルなところで答えますが、ミスチルの「HANABI」、超王道曲ですね。曲構成が特殊で、最初Aメロ、Bメロと進んで、またAメロに戻ってサビへいく、という。音楽をやってなかったらそこはスルーして自然に聴くと思うんですけど、僕としてはそこでAメロに戻るんだ!?と思ったり。それを参考にしているのか、と聞かれたら何とも言えないんですけど。 ―その発想力ですよね。 山口:ただ、そういうことはいつも自由にやろうとは思っていて。今月、「グラウンドに吹く風のように」という新曲を出すんですけど、その1番がAメロ、Bメロ、Cメロ、Dメロまであって、そのDメロがサビになってるんです。曲としては自然な流れでサビまでいくんですけど、その前に全然違うメロディーの構成が3つある。今、曲自体も短くなっていく中でいろんな曲構成をみんな作ってると思うんですけど、ミスチルは随分前からやってて、凄く面白いなと思ったりしますね。